埋まらない溝 ページ6
父の話を要約すると、現在学者達の間でもエンマ大王支持派か今勢いのある名家、イザナ族派で大きく別れているのだという。
そこで最近私がカイラ様に近づいたことでイザナ派と見なされ、父の研究費の補助が減らされたということ。
私の父は中立的な立場、そもそも私の父はあまり派閥に興味はなく、とにかく薬草について調べることが最重要事項である妖怪だ。
しかし、研究費が減らされた。
何事かと調べてみたところ、私がカイラ様と共に行動しているところから、私の一族がイザナ派についたと大臣に目をつけられてしまったらしい。
私の父の研究費の補助を出している大臣はミカド族を推す一族の筆頭らしいのだ。
「これは私情が入ってます。不当なのでは？」
「いや、これは不当では無い。これは妖魔界の補助ではなく、大臣個人の投資であるから…しかし、うーん…ここでミカド族につくことで中立ではなくなる。これはかなり危険なんだよ」
父が言いたいことは分かる。
カイラ様とは距離を置けということだろう。
学校に置いても政治が関わってくるなんて。…カイラ様が学校の中でもものすごい重圧の中で生きていることを知ってしまった。
「お父さん…ごめんなさい。あの、私、カイラ…くんとは距離置きたくない」
父の瞳が丸くなり、母は額を押えた。
「…あぁ。政治によって友を決めるのは良くない」
「お父さん…！」
「だが、イザナ族、ミカド族、この二種族だけは別だ。関わってはいけない。私達の一族は代々学者の家系であり、貴族でもなんでもない。この二種族に関わって良いことはひとつもない。特に中立を守ってきた自分たちのような一族には」
優しくはなかった。私に突きつけられたのは厳しい現実だった。確かにカイラ様の取り巻きは他の名家の者たちばかりだった。私と同じような子達はカイラ様に近付くことは一度もなかった。
学校内は平等だと言われているが、実際はそこには明確な格差が生じていたのだ。
知らないフリをしていたが、やっぱりそうだった。
「…分かりました」
この世界に私一人で生きているわけではないのだ。
お父さん、お母さん、弟もいる。
自分一人の行動が家族に迷惑をかけていた。
今日少しだけカイラ様との距離が縮んだ気がしたけど、また私達の間に埋まらない大きな溝ができた気がした。
『カイラ様の側近になりたい』
こんな感情を家族に伝えることなんて到底できそうになかった。
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