月を見て ページ48
「カイラ様、もうすぐフウくん、ライちゃんが来ます。
私が上に乗っているのは…重いでしょうし。
その…色々…!えっと、セクハラで訴えることもしません!そもそも、私がカイラ様を訴えるわけないじゃないですか〜!ねっ?」
こんなに不機嫌なカイラ様はかなり珍しい。
最近カイラ様の前で特定の方を褒めたりしていないけどなぁ。
「カイラ様…?」
「…はぁ…すまなかった」
ゆっくり解放されるので、私はすぐに離れ、カイラ様の傍に立つ。
「いいえ、カイラ様。それより隈があります。…心配です」
カイラ様は私を見上げて、何か言いたげだったが、切なそうに顔を逸らした。
その顔を見て、私も胸が痛み、顔を逸らしてしまった。
❀
あれ以来、仕事中もカイラ様の視線を感じる。
振り返ると、カイラ様は書類に目を落とす。
自意識過剰ではなければ、確実に私を見ている。
私はチクリと痛む胸を押さえる。
「カイラ様、七賢者との会議が午後から予定されています。そして、エンマ様からの引き継ぎで───」
「っ…!!」
カイラ様の瞳が大きく揺れた。
ちがう、これは本当に必要な───
どうしてそんなに悲しい表情を。
エンマ様とは和解をされていたでは無いか。
私はカイラ様を支えるどころか、邪魔をしているのではないだろうか。
「カイラ様」
私はグッと自身の手を握った。
「…少し、休暇をいただけないでしょうか」
そう言った途端、フウくんとライちゃんが目を丸くして、立ち上がる。
そして激しく動揺し、私の腕を掴んだのはカイラ様だった。
「…許さない」
「カイラ様」
「許すものか!!A、お前は私の…」
カイラ様がカイラ様ではなかった。
その時風神、雷神が間に入る。
「カイラ様!」
「なぜだ、どうしてだ。私に価値が無くなったか…?尊敬に値する者ではなくなり、幻滅したか?」
「幻滅だなんて!!ただカイラ様の仕事に私が支障をきたしているようでしたので…」
「断じてそれは違う。A、どこへ行くつもりだ、まさか本家軍か…?」
「え?」
風神、雷神も私も三人全員が目が点になる。
「え?なぜ本家軍に…えっ、まさか昨日カイラ様っ…」
大ガマ様と私が会っているのを見た…?
『以前言ったはずだ。私は嫉妬深いから、他の者を褒めるなんてことをしたら激しく嫉妬する、と』
『ささっ、オシャレで男前な大ガマ様〜』
昨夜の出来事とカイラ様の発言が綺麗に繋がった。
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