嫉妬深いから ページ47
あと少し。あと少しだけ。
まだフウくん、ライちゃんは来ていない。
── もう少しだけ。
カイラ様を寝かせてあげたい。起こしたくなかった。
「今日もカイラ様に沢山の幸せが訪れますように」
小さな声で言い、ゆっくり離れようとするとい勢いよく腕を引かれた。
「えっ!?」
バランスを崩し、勢いよくカイラ様の方に倒れ込みそうになる───が、ギリギリのところで、もう片方の手でソファの縁を掴み、倒れ込むことは防いだ。
「…そう簡単に倒れはしないようだな」
カイラ様の顔が近い。
こぶし一つ分ぐらいの距離…離れようとすると、腰を引かれ、私はとうとう倒れ込んでしまった。
顔を逸らして、顔面がぶつかるという、最悪な事態は回避したが、
今、カイラ様の首元に顔を埋めてしまっている状態である。
…カイラ様から良い香りがする。
カイラ様の香水の匂いだ。
「カイラ様?…突然…どうされました?とりあえず、一旦離れましょう」
そう言えば、私の腰を抱く力が強くなり、カイラ様とさらに密着してしまう。
「まさか…酔ってます?」
カイラ様からお酒の香りは全くしないけど。
でも、これはおかしい。
カイラ様はもしかしたら、妖怪に取り憑かれているかもしれない。それか激務すぎて疲労が溜まって…
「今すぐ病院に向かいましょう。やはり最近激務すぎて休みを…」
「A、以前言ったはずだ。私は嫉妬深いから、他の者を褒めるなんてことをしたら激しく嫉妬する、と」
「え…?」
カイラ様から抱きつかれ、私は行き場のない手を優しくカイラ様の頭を撫でた。
よく分からないが、私はカイラ様が急に子どもっぽくなって可愛らしかった。
寝ぼけてるのかもしれない。
「カイラ様。昨夜も徹夜だったのですか?
王になってさほど時間が経っていないのに求められることが多いですよね。それでも着実に仕事をこなしていくカイラ様の努力…並大抵でないことを私たちは知っています。お疲れ様です」
カイラ様の顔が私の首元に近づき、息が掛かるのを感じた。何かの線を越えてしまいそうになる。
私はすぐにカイラ様の頭を両手で押して引き離す。
「何してるんですか!」
カイラ様は私の顔を見つめ、不機嫌そうに顔を逸らした。
「えぇっ!どうして不機嫌なんですか、カイラ様!」
「セクハラとでも何でも訴えればいい。もういい」
私はとりあえず離れようとするがカイラ様は腕を緩めてくれる様子は無かった。
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