色をつけていく ページ46
「大ガマ様、皆さん、お世話になりました」
私は頭を下げる。
「またいつでも来てくれ。王の側近は大変だと思うが、困ったら頼れよ〜」
「ありがとうございます。大ガマ様はお酒飲みすぎないでくださいね。次は大ガマ様に勝てるように腕を磨いてきます」
前世の記憶が蘇った時、最初はカイラ様のことばかり考えていて、周りとあまり関わろうとしなかった。
ただひたすらにカイラ様の闇堕ち、反乱を防げるかを考えていた。
しかし、カイラ様と離れ、周りを見るようになった。
長い年月、人間と妖怪を繋ぐ仕事をしてきた。
そこで沢山の人間、妖怪と出会い、関係を構築し、別れはもちろんあったが、後悔はなかった。
人間庁での自分がなかったら今の自分はなかったし、こうして、妖怪同士の繋がりもなかっただろう。
自分の成長を感じることが出来て、少し泣きそうになった。
繋がりは本当に大事だ。私は一人じゃないから。
それはとっても幸せで。
以前は私がやってきた事はカイラ様を救えなかった。
何もできなかった。前世を思い出しても何もならなかった。無力感に苦しめられた。
でも───
前世の記憶、そしてそれを知って行動してきたこと。
これは無駄じゃなかった。
繋がりを作ることが出来た。
この繋がりは私の宝物である。
一緒に妖魔界の破滅を防ぎ、共に笑い、認め合い、
私の居場所がどこかを見出すことが出来た。
──── 私、ちゃんとここの世界の妖怪なんだ。
長い間つっかえていたものが綺麗に取れて無くなった。
前世の記憶が混在する中、ずっと心のどこかで自分の居場所が分からなくなっていた。
今思えば、カイラ様の傍に固執し、居場所を作ろうとしていたのかもしれない。
❀
「おはようございます〜」
執務室の扉を開ける。
しかし、少し早く着てしまった為、誰もいないようだ。
荷物を自身の机に置くと、ある事に気付き、私はゆっくり近づいた。
「カイラ様…?」
無防備に執務室のソファで寝ているカイラ様。
その寝顔は昔の寝顔とあまり変化していなかった。
相変わらず綺麗で、少し懐かしい気持ちになる。
カイラ様は真面目で努力家だ。
昨日も徹夜だったのだろう。
ちなみに私は普通にすき焼き食べちゃった…。
フウくん、ライちゃんも居ないことから一人で頑張ってたんだ。それに以前は私が近づいたらすぐに起きたのに。
私は自身の机に置いてある膝掛けを取りに行き、優しくカイラ様に掛けた。
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