こんなにも広くて ページ44
私は前世の記憶を思いしだし、長い年月を経て、この妖魔界の王の側近になっていた。
妖怪達は私を見ると「A様」と呼んでくれる。
認められている、受け入れられている。
これがどんなに嬉しくて幸せなことなのか、今の私にはよく分かる。
そしてカイラ様はもっと妖怪達から愛されて、認められていく。のしかかる重責もあるだろう。
私は少しでも責任を共に支え、カイラ様が潰れてしまわないようにしていきたい。
「ご馳走様でした!」
両手を合わして、ホンマグロ大将に伝えると、嬉しそうに「いい食べっぷりだったぜ」と褒められてしまった。嬉しい。
店から出ると、冷たい風が頬を撫でる。
すき焼きを食べて温まった体には心地よかった。
「Aじゃねぇか!」
声をかけられ、振り返ると大ガマ様が手をヒラヒラと振る。
「大ガマ様!ムゲン地獄以来ですね!お久しぶりです」
「おっ!そういえばゲソヒゲール大臣のニュース見たぜ?あれ実はAが関係してんだろ?すげぇな!」
「あれはエンマ様の活躍ですよ〜、私はエンマ様にお願いしただけです。ですが、褒められてしまったからにはこれは素直に受け止めちゃいます!」
私が笑うと、大ガマ様持ち上げてくるので、私も調子に乗ってしまう。
「よっ!妖魔界一のキレもの!」
「ふふんっ」
「よっ!よ〜!妖魔界一の優しさの塊」
「キャー!大ガマ様!!それ以上褒められたら〜漢方プレゼントしちゃいます!!」
漢方を渡すと大ガマ様はゲラゲラ笑い出す。
大ガマ様から少しお酒の香りがする。私はお酒は飲んでいないのに、一緒に笑ってしまう。
「A」
「はい?」
「付き合ってくれ、な?な?」
「えっ!?」
付き合う!?えっ、どういうこと!?
一瞬ドキドキしてしまうが、大ガマ様の様子を見てすぐに理解する。
「なっ?いいだろ?」
「あ、まさか。大ガマ様、またお酒飲もうとしてます?」
これ、本家軍のメンバー達に怒られそう…。
大ガマ様はお酒は強いが、飲む量が桁違いだから酔っ払うのだ。今まだ酔ってないけど。
「美女と呑む酒は最高なんだよ、なー?」
「大ガマ様、褒め上手なんだからー。でも私はその手にはかかりませんよ。さ、大ガマ様、本家軍に戻りましょうね〜」
「けっ、俺を年寄り扱いか!」
「ささっ、オシャレで男前な大ガマ様〜」
私は大ガマ様と共に本家軍に向かう。私は気づかなかった。
これが後々とんでもないことを引き起こすことを。
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