スポットライトはいらない ページ34
「急がないと」
空を見上げれば、普通の色では無い。
赤黒い色をした大きな何かが浮かんでいた。
「っ、もう既に鬼まろに取り憑かれてる……」
人間達と妖怪の繋がりは消えかかっていたが、僅かに希望を感じ取れた。
「この気配は……妖怪ウォッチっ……」
と同時にエンマ様の声が能内に響いた。
『カイラの件は解決した。現在妖怪ウォッチの所有者も見つかった』
「それは良かったです。現在さくら元町以外もかなり鬼まろに取り憑かれています。妖魔界も時間の問題かと」
『あぁ、A。以前よりもさらに妖力が高まっている。そこで、Aはムゲン地獄の妖怪が溢れないように動いて欲しい。指揮をお前に一任する。頼んだぞ』
「承知しました」
私は映画の場面に参戦は出来ないけど。いい。
私は私の仕事をする。
それに、エンマ様直属の特殊護衛部隊を指揮することができるなんて！！一介の妖怪である私が！！
「よ〜し、頑張ろう…！」
❀
「お久しぶりです！土蜘蛛様、大ガマ様！」
緊急事態なのに、久しぶりに大妖怪のお二人に会えて少しテンションが上がってしまう。
気を引き締めなければ。
「おっ！Aか〜！久しぶりだな」
「A、長い間会っていなかったな。息災であったか？…大ガマ、Aに抱きつこうとするな。見苦しいぞ」
土蜘蛛様が大ガマ様を睨む。
「お二人が居らっしゃるのは心強いです。私一人でこの隊を率いるのは初めてのことなので。私は武官ではありませんから…」
「Aは充分強いぜ！自信持ちな！」
大ガマ様に勢いよく背中を叩かれ、むせる私。
「ありがとうございます。では早速ムゲン地獄の階層別に別れましょう。まず私が最下層を務めます」
「はぁ！？まじか！？」
「はい。力には自信があります。とりあえず叩きます。最下層ほどあまり気にせず戦えるため、戦術はいりません。力技です。なので一番経験のない私が務めるべきだと思ったのです。本題はここから──」
なぜこのような提案をしたかと言うと万が一、最下層で私が失敗した場合、最下層から地上に戻るまで時間を稼げるから。
そこでベテランである二人には地上に近い場所で体力を温存してもらいつつ、最下層から上がってきた妖怪達を治めて欲しいと伝えた。
「一番の大役を任せてしまい申し訳ございません」
「いや、大変なのはAだろう。吾輩らは問題ない」
「任せろ、くれぐれも無理はすんなよ」
私は頷いた。
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