▽素直になりたい ページ33
「お言葉ですがカイラ様の作られたあの程度の結界、エンマが破れぬはずはありません」
爺はニコリと微笑んだ。
「…爺、お前はどっちの味方なんだ」
どいつもこいつもエンマ、エンマと……
実際玉座についたものの、エンマ派が多く、結局あれ以降七賢者達は現れない。
空席だ。
Aも───
*
『エンマ様に何をするのですか!衛兵!!』
なぜエンマを庇う。
エンマを心配そうに見つめる。
本当にエンマに絆されたのだろうか。
彼女の瞳には確かにエンマが映り、エンマも彼女と目を合わせていた。
許せなかった。
彼女は私の──居場所なのに
エンマは本当に何もかも私から奪っていく。
『っ、カイラさま……』
彼女は私を怯えたように見つめていた。
手は震え、泣きそうだった。
視界に入れたくない。
入れてしまったら、無理矢理にでも彼女の手を握り、繋ぎ止めてしまいそうになる。
『この者は今回の件には関係の無い者だ。ここから摘み出せ』
いつだって私は彼女を愛しているのに上手くいかない。
どんなことだってしてみせる。
王になって彼女を笑顔にしたい。
受け入れられたい、抱きしめられたかった。
Aは衛兵に連れられ、外に追い出された。
そして、倒れ込んだ彼女は悔しそうな表情をしながらも真っ直ぐ前を見て立ち上がっていた。
その様子を見て、手を伸ばそうとしたが、グッと堪えた。
これは俺とエンマの問題だ。彼女を巻き込みたくはなかった。
*
「全てを支配する。フドウ雷鳴剣があれば羅仙を制御し、さらに強さを得られる」
エンマよりも早く。フドウ雷鳴剣を手に入れる。
❀
「エンマ、フドウ雷鳴剣を手に入れるつもりか!」
幻夢洞窟に向かえばもう既に逃げ出したエンマがいた。
そしてぬらりひょんも居たが、Aは居なかった。
Aはエンマ達と合流するのかと思っていたが、そうではなかったようだ。
少し安心したが、エンマの顔を見るとまたフツフツと怒りが湧いた。
「さぁ、どうかな。
それよりカイラ、先程より表情が暗いぞ。Aはどうした」
「カイラ、お前が今しようとしていることは全てAが悲しむことだぞ」
「Aのことを知ったような口ぶりだな。笑わせるな」
蛇王剣を構える。
「カイラ、お前も分かっているはずだ。羅仙は世界を破壊する。Aの好きな人間界も妖魔界もだ」
「私はフドウ雷鳴剣を手に入れ羅仙を制御してみせる」
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