▽呪いのように離れない ページ32
玉座に腰掛け、ゆっくり目をつぶる。
─── A
なぜ彼女はエンマの隣に居た。
どうして私をあのような目で見つめる。
*
*
あの時の事は片時も忘れた事はなかった。
正気を取り戻した頃にはAの腹に深く刀が刺さっていた。
魂の消滅の危険性まであった。
彼女に酷い言葉を投げかけてしまった。
私はAを守りたかった。ただそれだけだったのに。
───『カイラ様、今こそ我々は立ち上がるべきです』
──『この小妖怪がカイラ様の判断を乱しているのですか?我々で排除致しましょう』
思い出すだけで虫唾が走る。
「私のせいか…」
「カイラ、お前は恐らく、情状酌量があったとしても、地下牢に投獄させられるだろう。Aには会えることは無い」
エンマはAの腹に手を当てていた。
「貴様っ、何を…」
「止血と痛みを和らげている、一時的にだがな。救護部に任せた方が確実だ。連絡を飛ばした。直に到着するはずだ」
「A」
私は震える手で、彼女に触れようとしたが、エンマが止めた。
「…Aを傷つけたお前が触れる権利はない。彼女に触れるな」
エンマも怒っているのがヒシヒシと伝わってきた。
奴は切なげに彼女の頭を撫でている。
私は彼女をずっと傷付けてきた。
エンマに対抗する言葉は一つも出なかった。その通りだった。彼女を守るために闇に染まり、結果彼女を傷付けた。
いや、私自身が弱かったから闇に染った。
地下牢でも彼女が頭から離れなかった。
忘れたことなどなかった。
ここを出たら、彼女に真っ先に会いに行き、謝ろう。
彼女はもう私を見てはくれないかもしれないが、彼女に想いは伝えよう。
最初はこの牢獄を出るつもりはなかった。
しかし、妖力が急激に高まり、簡単に牢獄が壊れてしまった。
その時に取り憑かれたように考えが変わる。
何もかも私から奪い、邪魔でしか無かったエンマから王座を奪い取り、妖魔界の王になる。
王になれば、Aも妖魔界も、誰も私を蔑むことは無い。
本当に認めてもらえるだろう。
Aは私の元に仕えたいと言っていた。
彼女は側近にすればいい。
きっと彼女は『俺』の傍にきてくれるはず。
その後は簡単だった。
ウーラと共に力で七賢者を抱き込み、エンマを王座から引き下ろす策を練った。
*
*
「んーどうやら逃げたようですな」
ウーラ──爺がそう呟いた。
「エンマめ……忌々しい奴だ」
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