王の座 ページ31
大きな音を立て、重い扉が開いた。
「エンマ大王様」
扉の向こうにいるのは七賢者達だった。
そしてその奥にいるのは
「ウーラ様…」
私は顔が真っ青になっていたのだろう。エンマ様が私の腕を掴んで倒れないように支えていた。
「落ち着け、A。俺が時間を稼ぐ」
エンマ様が私を隠すように前に立った。
「どうした。七賢者達じゃないか……見ない顔もあるのだが?」
「エンマ様には大王の座を降りていただきたく、こうして参りました」
「七賢者の会議、多数決の結果、エンマ様は大王には不適であると判断されました。よって妖魔界法に従い、退任していただきます」
「俺は何も罪を犯してはいないが?何かの間違いでは無いか?」
七賢者達がぞろぞろと書類が差し出す。
私達は書類を見ると財政面での決算の改ざん、そして横領の記録などがある。
「エンマ様……これは…」
完全に罠に嵌められた。
「あぁ、嵌められたな」
「そして私達七賢者は新たな王として蛇王カイラを推薦します」
私は顔を上げた。誰よりも待ち望んでいた方とこんな形で再開するなんて。
予想は心のどこかでしていたが、今、ここで起こるなんて想像していなかった。
カツカツと廊下から足音が聞こえてくる。
「カイラ様」
ウーラ様が頭を下げた。
「この者を捕らえよ!」
冷たい声だった。
最後に会ってから随分経った。彼は紛れもなく、私が前世で見てきたカイラ様の姿だった。
「エンマ様に何をするんですか!衛兵!!」
エンマ様は抵抗することなく、腕に特殊な手枷が付けられる。
「大丈夫だ、A」
真っ直ぐ視線を向けられ、それがぬらりひょん様の事だと分かっているが、いざ連れていかれるのを見ると胸が痛くなった。
「っ、カイラさま……」
私は震えが止まらなくなった。
カイラ様の顔はもう私を許してくれるカイラ様ではなかった。
「この者は今回の件には関係の無い者だ。衛兵!ここから摘み出せ」
私は衛兵に腕を捕まれ、外に追い出された。
カイラ様の瞳は冷たかった。
私を一度も見てはくれなかった。
「…中途半端では終わらせないですから…カイラさま」
私はゆっくり立ち上がり、人間界に向かう事にした。
私は私で人間界の被害を最小限度に抑えなければ。
さくら元町はきっと人間達が解決するだろうから私は隣町に向かわなければ。
エンマ様はきっと幻夢洞窟に行かれるだろうから。
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