始動 ページ30
一通りの流れをした後、私はエンマ様にダンボールから急須と茶葉を取りだし、お茶を出した。
「エンマ様」
「あぁ、分かっている……最近の人間界は何かがおかしい」
エンマ様は本当にお強い方であり、聡明な方である。
妖魔界、人間界二つの世界を見ている。
妖魔界のみだけ見ていればいいというわけでない。
人は死んで妖怪になり、妖怪また生を受けて人間となる。そのサイクルがあるからこそ、片方のみに意識を向けることは危険である。
以前までは妖怪と人間の繋がりが強かったからこそ人間と妖怪が協力し合っていた。またケータ君の存在が大きかった。
しかし今はどうだろう。妖怪ウォッチの存在は封印され、ケータ君の存在を思い出せない妖怪が増え、人間界と妖魔界の繋がりは薄れてきた。
私は妖怪ウォッチの封印に反対派であったが、ケータ君に続く妖怪ウォッチに選ばれる後継者が現れないことにはどうしようもなかった。
「A」
「はい」
「俺の元に仕えるつもりは無いか。俺は今人間界をよく知る妖怪が欲しい。Aの力を貸してくれないか。もちろんカイラの件は分かっているが…」
私はカイラ様にしか仕えないと決めていた。
変な意地だ。
でも、今は人間と妖魔界の危機が迫っている。もうすぐ鬼王羅仙の襲来が近い気がする。
「……分かりました。友と妖魔界、人間界のためですから」
彼は嬉しそうに笑った。
❀
それから数ヶ月間、人間界と妖魔界に行き来するようになった。
ある日妖魔界に戻り、私は目を細めた。
なんだこの邪悪な妖気は。
「エンマ様、これは……」
「あぁ、妖力が異常に高まっているんだ。ぬらりにも原因を調べてもらっている。A、行くぞ」
「はい」
私達は宮殿に戻り、妖魔界の現状が浄玻璃鏡に映し出され、私は絶句した。
「妖魔界にもこんなにも被害がっ……?」
先程見た以上だった。
「あぁ。人間が暴走しだす話は来る途中でAから聞いていたが、こちらでも同じ現象が起きている。人間と妖怪の交流が減っているのに対して、これは不自然だ」
映画でもこんな展開は無かった。
これは一体…
空亡の出現が早まっているのだろうか。
いや、でも───
その時、扉が叩かれた。
「ぬらりひょん様でしょうか?」
「いや、ぬらりの妖気を感じない…何かがおかしい。
A、構えておけ」
エンマ様が真剣な表情で扉に視線を向けた。
「入れ!」
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