会者定離 ページ29
私はその後も長い年月を人間界で過ごした。
人間に化けて、人間と関わり続けた。
しかし私は決まり事に従い、同じ場所に五年以上とどまらないようにした。
町を出る際には姿を変えた。
「今までお世話になりました」
仲良くなった近所の方、隣に住む家の小学生の少年。
「おねーさん引越ししちゃうの?」
「うん。転勤が決まっちゃってね」
「テンキン?」
「そうそう、仕事をする場所が遠い所になっちゃったんだよね」
妖怪になって思うのは別れの回数が人間だった時よりも圧倒的に多いことだ。寿命が異なる種族同士だとこうなる。
この仕事は他の妖魔界の仕事よりそれが遥かに多い。
分かってはいたが、この瞬間はなかなか辛い。
だが、関係を築いていく瞬間は何よりも幸せだから、人間と関わらずには居られないのだけど。
「もう会えないの?」
少年は少し悲しそうだった。
基本的に少年が生きている間に会うことは無いだろう。
少年の親もそれは何となく察しているようだった。
でも稀に会うことがあるのだ。
それは縁なのかもしれないけど。
「そんなことはないよ。また必ず会えるよ」
長い年月を経た先に、必ず。
❀
荷物をまとめていく。
夜は冷えるが、昼は暖かくなってきた。
梅も咲いている。
「次の町は………さくら元町……かぁ…」
私はどこかで避けていた。
ケータ君はいつしか私達妖怪を呼び出さなくなったから。
そして、妖怪と人間の絆が薄れ始めた。
人間庁も以前と比べ人員がかなり減らされた。
最近はエンマ様にも全く会っていない。
なぜケータ君は記憶が無くなったのか。周りの妖怪達もケータ君を思い出せなくなってしまった。
「ケータ君はさくら元町で暮らしているんだよね」
そしてここから大きな物語が始まるのだ。
新しい家に向かえば、見慣れた人物が立っていた。
「っ、エンマ様?」
「A、久しぶりだなあ。元気にしていたか?」
私はとりあえず、殺風景な部屋にエンマ様と入る。
「今日が引越しだったもので、ぐちゃぐちゃですが……すみません……というより、エンマ様来られる際は事前に連絡を!!」
「それはすまなかった」
エンマ様を見ると、かなり背が伸びて雰囲気が変わられた。
「ん?惚れたか?」
エンマ様がニヤリと笑うので、私はため息をついて、漢方を差し出した。
「凛々しいお姿で、ばあやは幸せにござります」
「ばあやか〜!そう来たか〜」
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