私の罪 ページ24
先代の閻魔大王様が崩御され、妖魔界全体が悲しみに包まれた。あれから一年が経っていた。
そしてエンマ様が妖魔界の王として君臨した。
私はもうエンマ様とはあの病室以降会ってはいない。
エンマ様は何も悪くない。
私がエンマ様に合わせる顔がなかった。彼は悲しい顔をしていた。頭の隅に焼き付いて離れない。
私の罪は深い。
エンマ様が連れ出してくれたから、背中を押してくれたから。被害に抑えられたのに。勝手にエンマ様のせいにして。
私がもっと早く行動していれば、カイラ様を止められたかもしれないのに。
エンマ様のせいにして自分の無力さを隠す自分が一番許せなかった。
罪悪感に押し潰されそうで、エンマ様と顔を合わせられない。
私は現在、人間界で生活をしている。
人間庁に就職し、人間と妖怪を繋ぐ仕事をしている。
今回は妖怪の世界に迷い込んでしまった人間を元の世界に送り返している。
「迷子になっちゃったかな?」
子どもは妖怪の世界に迷い込みやすい。
純粋で穢れていないから。定まった見方をしない柔らかな視点は新しい世界を開くのだ。
目の前の少女は泣いている。
それは独りでこんなところに迷い込んだら心細いだろう。
「大丈夫、元の場所に私と一緒に帰ろう?」
私もしゃがみこみ、少女と視線を合わせた。
可愛らしい目元が赤くなって、頬もほんのり赤い。
「本当に帰れるの?」
「大丈夫、帰れるよ。ねぇねぇ、空を見て?ここの空は特別でね、月が手に届きそうなぐらい近いんだよ〜!」
「っ……ほんとだ……」
顔を上げた少女の両手を優しく握った。
「さっ、帰ろう?このお月様の柄は何に見える〜?うさぎの餅つきかな?それとも蟹かな?女性かなぁ?」
「うさぎっ!あの月には兎が沢山住んでるんだよ」
「えっ、そうなの!?」
❀
「ばいばい!お姉ちゃん!」
「気をつけてね〜!」
手を振って少女が家に入るのを見届けて、私は妖怪の姿に戻り空を飛んだ。すると背後から声をかけられる。
「おや、Aじゃないか、珍しいねぇ。この町に来るなんて」
「そうだね。この町はエンマ様のお気に入りの町だもんね…」
キュウビが目を細める。
「A、大王様はそんなに狭い心の持ち主じゃないと思うけど?」
「分かってる…でも私、エンマ様と気軽に会う距離にも居ないし、それに」
「必死に理由をつけて逃げようとしてるねェ」
図星だった。
胸が締め付けられ、何も言えなかった。
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