払拭 ページ21
「エンマ様、授業抜けてきましたよね……」
「Aの様子がいつもと違ったからな。でも来てよかった」
エンマ様は目を細めた。
いつもと違う表情に私は驚く。
「…落ち着いたので授業に戻りましょう…？エンマ様は先に行ってください。私は後から行きますから…」
「サボるか？」
「え！？」
エンマ様はニヤリと笑うので、私は笑ってしまう。
「そんな事してもいいんですか？」
「よし！決めた！行こうぜ！」
両手を掴まれ、勢いよく立ち上がらせる。
「エンマ様！？」
顔を見ると、
彼は今までの笑顔ではなくて無邪気な笑顔だった。
そして私はエンマ様に手を引かれるがままに一緒に学校をサボってしまったのである。
❀
「…ここって……」
「あぁ。カイラの屋敷だな」
目の前に広がる大きな屋敷。
私が青ざめているとエンマ様が鼻で笑う。
「A、この程度で怖気付いているようじゃ、カイラを学校に連れ戻すのは難しいぜ？」
私がエンマ様を見ると、エンマ様はまたカイラ様の屋敷に目を向けた。
エンマ様の一族とカイラ様の一族は犬猿の仲。
エンマ様は近づいてもいいのだろうか。
「エンマ様…大丈夫ですか…？」
「それはこっちのセリフだな。A、覚悟はいいか」
「え、今から乗り込むんですか！？」
「当たり前だろ？何怖気付いてんだ。いつもの威勢はどうしたんだよ」
エンマ様は不満げである。
しかし、私はまだ一歩踏み出せない。
家族に迷惑がかかるのではないか、またカイラ様に拒絶されたら──
「A、じゃあ戻るか？」
「っ……」
確かに、私はまた中途半端で終わらせるの？
カイラ様のあの冷たい言葉、あれを全て信じてしまうの？
いつもカイラ様の言葉には棘の奥に本音が隠れている。
『───今後、決して私に近づくな、関わるな』
カイラ様の言葉────私を反乱から遠ざけようとしていた？私を巻き込まないように……？
「……遅くなりました、エンマ様。乗り込みましょう」
「覚悟が決まったようだな。恐らく、カイラは閉じ込められている。そして捕まえている者は俺の敵対するイザナ族を筆頭とした反乱勢力だろうな」
「私達二人でこの屋敷の警備を突破できるのでしょうか」
そこは大きな問題だと思う。エンマ様一人であれば行けるかもしれないが、私が足を引っ張ってしまう気がする。
「余裕だな」
「えっ……」
エンマ様は平然と言った。
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