定められた道 ページ20
久しぶりに冷たい声色だった。
完全に一線を引かれた気がした。
明らかな拒絶だった。
「やはり、お前にはこの崇高な考えが分からないようだ」
カイラ様は静かに立ち上がり、私を見下ろした。
「──今後、決して私に近づくな、関わるな」
カイラ様が行ってしまう。
私は急いで彼の腕を掴んだ。
引き止めなければ、私は───
「まって、待ってください、カイラ様っ…!!
では、私がカイラ様について行くと言ったらお傍に置いてくださるのですか!!」
「いや?忠義のない者を傍に置くわけが無いだろう?そもそもお前は私の気まぐれだ。なんの力にもなり得ないお前を傍に置くつもりは決して無い」
私は頭が真っ白になり、腕の力が抜けた。
そして、気がついたら涙が溢れていた。
「…エンマにでも慰めてもらえ。アイツならきっとお前を支えてくれる」
カイラ様は静かにそう言い、書庫を出ていく。
いつもの私なら引き止められた。
彼をここで引き止めなければ、誰が彼を引き止めるのだろう。
だが足に力が入らず、私は泣くことしかできなかった。
❀
カイラ様とはその後会うことが無くなった。
森に行っても、彼はいなかった。
そしてあの事があってから一週間後。
とうとう、学校にも来なくなってしまった。
何が正解だったのだろう。
私は何も変えられなかった。
『なんの力にもなり得ないお前を傍に置くつもりは決して無い』
カイラ様の言葉を思い出し、講義を受けている最中だというのに涙が溢れてしまった。
「すみません、少し頭が痛いので救護室に行きます」
走って教室を飛び出た。
カイラ様にお会いしたい。
ずっと胸が苦しい。
「…はぁっ……」
呼吸が苦しくなり、息ができなくなる。
廊下に座り込んで、両手を床に着けた。
カイラ様っ───
「A、落ち着け。ゆっくり息を吐くんだ」
背中を撫でられ、声のする方を見ると、エンマ様だった。
私は彼から顔を逸らす。
今はエンマ様の顔を見れなかった。
しかし、エンマ様はそのまま私の呼吸が落ち着くまで背中を撫で続けてくれた。
「少し落ち着いたようだな」
エンマ様は穏やかに笑って私の頭をわしゃわしゃと強めに撫でた。
こういう時にすぐに気づいて駆けつけ、助けてくれるエンマ様はやっぱり素敵な妖怪だと思う。
だが、エンマ様を見ると同時にカイラ様が浮かんで悲しくてまた涙が溢れそうになった。
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