手を掴む ページ18
あれからカイラ様とは進路の話はやめ、その後は鍛錬をして解散した。
カイラ様が反逆者として投獄されるのはどのタイミングなのか分からないけど、それだけは防ぎたかった。
「A」
突然呼ばれて急いで顔を上げる。
もう講義は終わり、休憩時間だった。
「ボーッとして、珍しいな」
エンマ様だ。
「どうした?具合が悪いのか?」
額に手が当てられて、私はすぐにエンマ様の手腕を掴んだ。
「大丈夫ですから!エンマ様、その…距離が近いです。ちょっかいのつもりかもしれませんが…」
「A、おもしれーんだもん」
「ダメです!エンマ様のファンクラブに私が滅せられるので!!ちょっかいを出すならファンクラブの方へ!どうぞ!」
私がファンクラブに向かって手を向けると、エンマ様は笑うだけ。
「もうっ…早く行ってください」
「じゃあAが俺のファンクラブに…」
「断固拒否します」
エンマ様はこの十年間全く読めなかった。
エンマ様は私に好意がある訳では無い。
何となくわかる。他の妖怪と違い、珍しいタイプの妖怪だから気になっているだけだろう。
エンマ様は好奇心が強いお方だ。しかしそのせいで──
背後からカイラ様の刺すような視線を感じる。加えてエンマ様ファンクラブの方々…
結局十年間エンマ様と距離を置くことは出来なかった。
父は特にそれについては言うことは無かった。まぁ大臣が問題ないと判断したのだろうか。詳しいことはよく分からないけど。
何かとエンマ様は私に話しかけてくる。
私もエンマ様のことは嫌いでは無い。むしろ好きだが、遠くで見ていたい。
私はカイラ様を怒らせたくないし、傷つけたくもない。
「なっ、A?」
「入りませんから!あ、書物を返しに行かないと!エンマ様失礼しますね!」
私は急いで立ち上がり、教室を飛び出した。
書物庫に入り、書物を元の場所に戻す。
「はぁ…」
呼吸を整えて、書物を眺める。
「これは…」
手を伸ばそうとした時、後ろから手を握られた。
私は勢いよく振り向く。
「カイラ様!?」
「大丈夫だ。今ここには私とAだけ。そして元より、この書物庫には誰も寄らない」
学校内でカイラ様と話すなんて。
嬉しかった。
「カイラ様」
「どうした」
「…話せて嬉しいです」
そう言うとカイラ様は目を丸くして、切なげに顔を逸らした。
しかし私達の手は繋がれたままだった。
21人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ