枝のように ページ17
あれから十年が経とうとしていた。
そして私はカイラ様と表立って会ってはいないが、相変わらず森で共に鍛錬を続けていた。
───秘密の友達のようだった。
「カイラさま!」
カイラ様の特訓のおかげで私もかなり強くなれたのではないだろうか。そろそろこの学校の卒業が近付いてきていた。
私の実技と筆記結果ならば妖魔界閻魔庁レベルの試験も受けれるという。
しかし私はカイラ様の護衛にでもさせてもらえないだろうか…なんて密かに考えている。両親には閻魔庁に志願するとは言っているが、私はカイラ様について行く。
「A、遅かったな。…何かあったか?」
カイラ様は以前は私と同じ背丈だったのに今は軽く抜かれてしまった。そして可愛いというより、綺麗になってしまった。
可愛いカイラ様とはおさらばなのは寂しいが、こちらのカイラ様も素敵である。
─── カイラ様は今後、さらに美しくなる。
それを間近で見ることが私の今の密かな希望である。
「カイラ様にと…漢方を用意していたら遅れてしまい…申し訳ございません」
カイラ様は眉を下げて、笑う。
最近カイラ様はこの森では笑うようになった。学校では全く笑わないが。
「また漢方か。まぁ…飲んでやらないこともない」
優しく頭を撫でられ、私は顔を上げる。
最近のカイラ様は優しい。
以前の刺々していたカイラ様はどこへやら。
まぁ、学校では刺々しいカイラ様をたっぷり見ることが嫌というほど見ることができるけど。
「…ところでA、進路は決めたのか?」
「はい!」
私はカイラ様の前で跪いた。
「カイラ様について行きたいと思います!カイラ様の向かう場所に私もお供したいです!」
「……A」
その時、カイラ様の顔が少し歪んだ。
重荷に感じてしまっただろうか。
私は急いで立ち上がり、訂正する。
「それぐらいカイラ様への想いが強いということで…!…実際は閻魔庁を目指そうかな…と」
「は?」
声が低くなったカイラ様。
まだ閻魔というワードは地雷だった。
「エンマか?」
「えっと…」
「閻魔庁とは…エンマに仕える気か?」
「そういう名目ではありますが、実際はエンマ宮殿の護衛とかです。カイラ様と鍛えたこの体を存分に発揮します!」
「それか人間庁もいいと思ってるんです。人間と妖怪を繋ぐ大切な役割を担う場所であるので…」
しかしカイラ様の表情は変わらなかった。
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