月のような君に。 (ページ12)

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▽君の隣は私の居場所ページ12

「カイラさま〜！」

彼女は大きく手を振って私に笑いかける。

「今日も来たのか」
「はい！カイラ様におにぎり作ってきました！休憩にしませんか？」

──私はどこで安らげばいいのか分からなかった。

屋敷では常に半妖のせいだ、エンマに勝てないのかと一族に罵られ、学舎ではエンマとその他の私を利用しようとする者、半妖と馬鹿にする者たちに囲まれた。

どこにも自身を認め、受け入れてくれる居場所は無かった。

苦しかった。なぜ半妖なだけでイザナ族として生まれただけでこんなにも重圧に耐えねばならないのか分からなかった。
同じ重圧を抱えているだろうエンマは私の仲間だと最初は思っていた。しかし違った。
奴は輝くミカド族であり、現妖魔界の王の孫だ。

何もかも違った。
なのに奴は

────『俺達は何も変わらないぜ、カイラ』

真っ直ぐに言うエンマが腹立たしかった。
全てを持っている奴に言われても何も響かない。むしろ馬鹿にされているような気分だった。
だから奴を超えるために必死に鍛錬を重ねた。
腹は立つが超えるべき壁として。

力さえあれば周りはついてくる。
奴のように。

無心でただ力のみに固執した。

しかし、突然彼女が俺につきまとい始めて、何かが軽くなった気がした。

───『私、カイラ様が好きです』

初めてだった。
私の存在を好きだと言ってくれたのは。
大抵の妖怪達は私の立場、容姿のみを見て、惚れたと。
ただ口だけだった。
暴言をかければすぐに怯えていなくなった。

今まで否定されてきた自分を彼女は好きだと言ってくれた。

嬉しかった。
嬉しくて、堪らなかった。ずっと彼女を目で追ってしまう。

意識してしまう自分が堪らなく嫌だが、意識せざるおえなかった。
本当は抱きしめられていた時からきっと彼女に惹かれていた。だから、エンマに彼女が支えられているのをみて心底腹が立った。許せなかった。腸が煮えくり返りそうだった。

彼女だけはエンマに奪われたくはなかった。
だがエンマはAに興味を持ち始めた。確かに、最近の彼女はこの学舎では異質であり、魅力的だ。
漢方の押し付け癖はどうにかしてもらいたいが。

「カイラ様？鍛錬のしすぎでは？顔色が…」
「…煩い」

彼女の顔を見ると胸が高鳴り、見ていられなくなる。すぐに顔を逸らす。

「カイラ様、漢方…」
「いらない」

断ると悲しそうにするAを見ながら、隣に居るだけで幸せだと感じた。