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7年前、私は小さな檻の中にいた。


外から鍵が掛けられた、小さなアパートの中。





そこが私の世界の全てだった。





___________

______




父は朝から家を外し、夜中に帰ってきた途端に私に暴力を振るう最低な男。


母はそんな父に嫌気が差し、私を置いて1人で逃げ出した利口な女。




そんな環境で私は育った。




私の事を家族どころか人間とも見ていない、糞な人種の父親。



毎日暴力をふるわれれば、暫くすればさほど痛みも感じなくなる。




そんな父が、ある朝死んだ



………………らしかった。




夜中。


いつも通り部屋に入ってきたのは、父のように荒っぽく歩く人ではなかった。





「君の父親は死んだ。」





ズカズカと荒れた部屋に入ってきたその男が、私にそう告げる。



私は表情を変えることが出来ない。




「…………し、んだ?」


「嗚呼そうだ。よって組織に残された借金を返済してもらうため、君を海外に売ることにした。」




男は笑みもなく、淡々と云った。



対する私は、産まれてから一度も感じたことの無いほどの“怒り”に苛まれていた。




「………………に」


「は?」


「私があの男を殺すつもりだったのに!!!」




私はそう叫び、近くにあった包丁を手に取った。


そして、男と強く、目を合わせる。




「!!?」


「許さない、あのクソ親父は私が殺す予定だったのに、なんで………!!」




動けない男に跨り、私は一気に包丁を振りかざす。



……………が。




「うっ、」


「っ、なんだったんだ、今のは………」




部屋の外にいた別の男が、いとも簡単に私を突き飛ばした。



男は立ち上がると、誇りを払ってから背後の人に何かを耳打ちした。




「君は異能者か?」


「………………」


「無言は肯定と見なす。では、どうやって発動する?」


「…………知らない、私は異能力なんて使えない。使えるのは父さんだけ。」


「…………アイツが?」




父は、異能力者だった。


目を合わせた相手の動きを止める、暴力には持ってこいの力。




男は何かを考えるように俯くと、顔を上げた。




「予定変更だ。父親の異能力が最後の土産に君に渡っているのなら、売るのは勿体無いだろう。」




男は尻餅をつく私の目線に合わせ、しゃがみこむ。



そして、優しい瞳と口調で云った。






「私の所へおいで。」






嗚呼、なんて憎たらしい声なのだろうか。

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鈴蘭(プロフ) - こんるりさん» ぜひ参考にしてください!やっぱり中也カッコいいですよね←私は双黒推しですww貴重なご意見ありがとうございまーす!! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 9a95a8d97d (このIDを非表示/違反報告)
こんるり(プロフ) - 話の進め方が凄いなと思いました。参考にさせてほしいくらい!! 私は中也の話が良かったと思います。というか中也推しなんですけどねwww (2018年5月27日 18時) (レス) id: 5e0d07926f (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 今宵さん» 何を!仰っているのですか!!先輩に勝ってるなんて!!そんな、勿体無いお言葉を………(泣)受験勉強で時間ない中私の作品を読んで頂いていて本当にありがとうございます!!超応援してます!!またお話しましょう!! (2018年5月25日 23時) (レス) id: 9a95a8d97d (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みぃさん» ありがとうございます!新作も頑張っていくので、よろしくお願いします!(≧∇≦) (2018年5月25日 23時) (レス) id: 9a95a8d97d (このIDを非表示/違反報告)
今宵(プロフ) - 完結おめでとう!初作品とは思えないクオリティ……負けました(笑)これからも頑張ってね! (2018年5月25日 20時) (レス) id: c22f6d85ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年4月28日 22時

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