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切られたばかりの携帯電話を閉じ、溜息を吐いた。



繋がっていた先は、“自組織の首領に電話を掛けるA”の携帯電話だった。



そいつを仮に、A(エース)としよう。




その電話は、Aにではなく私に対しての電話だった。


私に………否、ポートマフィアに警告を及ぼすための、1本の電話。



私とAの間に会話は無く、記録も既に消去した、『記憶だけに残る電話』。




それには、彼女の全てが詰まっていた。




恐らく、自分の携帯電話で私に掛けた後、もうひとつ持っていた携帯電話でAに電話したのだろう。


電波を察知されることなどを考えれば、むしろ使い分けているほうが自然だろうし。




その内容は、答え合わせのようなものだった。




組織がポートマフィアを潰そうとしている事、自分がその組織のスパイである事。


襲撃作戦が立てられていた事、それを止めることができそうな事。


自分がポートマフィアの情報を持っている事、その情報がもうすぐ組織の手に渡る事。




______そして、


『帰還命令』と共に、彼女が死のうとしている事。




組織の首領にあのような取引を持ちかけノコノコ帰ってくれば、命が助かるとは思えない。



そして中也にヒントを出していたのは、Aがその命令に応じ、死にに行くつもりだから。



その前に真実に気付き、『たまたま首領との会話を聞かれてしまった』という状況を作るためだ。


たまたまならば、自分で持ちかけた取引を破った事にはならない。




はっきりと云えば、これはポートマフィアにとっては最高のシナリオだった。



ポートマフィアの襲撃を企てていた組織が判明した上、1年間も我々を欺いていた二重スパイが自ら死ぬのだから。




しかし、本当にこれでいいのか。




ポートマフィアの幹部としてではなく、Aの1人の友人として、このまま彼女を見殺しにするのが正解なのか。



柄にもなく、悩んでいる自分が居た。




しかし、今となってはもしもこの状況を変えられるとしたら、1人しか残っていない。





「君は何処まで気付いた……君は如何するつもりだ、中也?」




誰もいない空間に、私の声だけが響いた。

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鈴蘭(プロフ) - こんるりさん» ぜひ参考にしてください!やっぱり中也カッコいいですよね←私は双黒推しですww貴重なご意見ありがとうございまーす!! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 9a95a8d97d (このIDを非表示/違反報告)
こんるり(プロフ) - 話の進め方が凄いなと思いました。参考にさせてほしいくらい!! 私は中也の話が良かったと思います。というか中也推しなんですけどねwww (2018年5月27日 18時) (レス) id: 5e0d07926f (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 今宵さん» 何を!仰っているのですか!!先輩に勝ってるなんて!!そんな、勿体無いお言葉を………(泣)受験勉強で時間ない中私の作品を読んで頂いていて本当にありがとうございます!!超応援してます!!またお話しましょう!! (2018年5月25日 23時) (レス) id: 9a95a8d97d (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みぃさん» ありがとうございます!新作も頑張っていくので、よろしくお願いします!(≧∇≦) (2018年5月25日 23時) (レス) id: 9a95a8d97d (このIDを非表示/違反報告)
今宵(プロフ) - 完結おめでとう!初作品とは思えないクオリティ……負けました(笑)これからも頑張ってね! (2018年5月25日 20時) (レス) id: c22f6d85ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年4月28日 22時

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