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story49*鋭く冷たいその視線 ページ7

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大きな氷の浮いたグラスを手に持ったまま、太宰さんは視線を正面に向け、動かなくなった。


その瞳はグラリと揺れ、先程までの温かさがどんどん失われていくような錯覚を起こす。



「ポートマフィアの、首領?」


「……は、はい」



聞き返された、その一言で……聞いてはいけない事を聞いてしまったのだと悟るには十分だった。


やっぱり、太宰さんにとってポートマフィアのことは“楽しかった昔のこと”なんかじゃなかったんだ。こんなこと……こんな身勝手な理由で掘り返していいことじゃなかったんだ。



「どうして君がそんなことを聞くのかい?」



いつもよりも少し低い声。けれどさっきよりは気遣ってくれている声で問われ、私は太宰さんと視線を合わせた。



「ポートマフィアの首領から福沢さ……社長に通達が届いたそうです。内容は、私の身柄を受け渡してほしいと」


「……は、」


「ぁ、だ、太宰さん……」



私が告げた内容に余程驚いたのか、太宰さんはその手からグラスを落としてしまった。


耳障りな雑音が静かな室内に響き渡り、やがて零れたアルコールが机からポタポタと垂れ始める。


それでも太宰さんは目を見開き、私のことをじっと見ていた。



「それは本当?」


「あの、はい……それよりも、拭かないと……」


「そんなのどうでもいいから」



雑巾を取りに行こうとした私の腕をつかみ、立ち上がるのを止める。


そしてもう一度私を座り直させると私の目を見て聞いてきた。



「ポートマフィアの首領が自分を狙う理由に、心当たりはあるの?」


「……っ!」



心当たりなんて、ない。


普通に生きてきてポートマフィアに目をつけられることなんてまずないのだから、あるとすれば探偵社員であること自体。そこから私が名指しされた理由なんて本当に分からない。


ありませんって言えばいいのに……太宰さんの表情があまりにも暗く、遠い世界を見ているような気がして、私は怖くてガクガク震えだしてしまった。



「なっ……な、ない……で、す」


「本当に?」



私は首振り人形のようにコクコクと何度も頷いた。



「ほんと……っ、です……」



どこまでも冷たくて、どこまでも鋭いその視線。私は捨てられた子供のように震えながら、泣いていた。


本当に、私は、情けない。



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りんご(プロフ) - はじめまして!読み漁っていて見つけてから一日で前作からここまで拝読させて頂きました!スラスラ読めて脳内再生も余裕という…凄いです…尊敬です!よろしければ続きが読みたいです…! (2020年11月2日 15時) (レス) id: 0c05c25a4f (このIDを非表示/違反報告)
心音ユイ(プロフ) - 続きを…与えてください… (2020年2月2日 9時) (レス) id: 7ab19ab3f9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうしよう...きゅんきゅんしすぎて心臓が痛いです!なんなんですか!最高すぎます!これからも頑張ってください! (2019年6月1日 22時) (レス) id: e724ba4185 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶 - 初めまして、このお話と作者様のファンになりました!これからも頑張ってください! (2019年5月6日 17時) (レス) id: 32ca0aa653 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - わっふる。さん» コメントしてくれてありがとうございます!評価してくださってとてもうれしいです。これからもよろしくお願いします(^^) (2019年5月6日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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