story34*これはきっと、一晩の夢 ページ39
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「ひどいです、だざいさんっ」
「A、もう水飲みなよ……」
顔は見えないけど、もうこのまま困らせちゃえばいい。働いていない頭でそんなことを考え、私はぎゅっと腕に力を込める。
ボロボロ泣きながら、私は日々溜め込んだ気持ちを叫んでいた。
「だざいさんが私のこと大好きだって、私がどれだけわかってても、だざいさんが私の気持ちをわかってくれなきゃ意味ないじゃないですかぁ!」
「……A」
「ひどい。好きになるつもりなんて無かったなのに……私に、私なんかに優しくするから」
大好きになっちゃったじゃないですか、と泣きながら言う。
目を見開く太宰さん。大粒の涙を零す私。あれ……段々、頭がぼうっとしてきた。
「ひどいです……私なんかに、夢見せるなんて」
家がない私を助けてくれたり、私の作るご飯を美味しいって言って食べてくれたり、綺麗なお洋服を選んでくれたり、可愛いって言ったくれたり。
こんな格好いい人にそんなことされたら、どんな女の子だって好きになっちゃうに決まってる。
「だざい、さん……」
「ねえ。一度でいいから、治って言ってみて」
「え……」
急な言葉に、顔を上げる。
____目の前の太宰さんは、見たこともない顔をしていた。
「太宰さん、」
「お願い」
頬を染め、眉を下げ、口をきゅっと結んでいる。まるで、誰かを愛しむような表情。
その顔を見た、私の顔は途端に真っ赤に染った。
「おさむ、さん」
「もう一回」
「えっ」
一回って言ったのに、と思いながらももう一度「治さん」と読んでみる。
すると。
「愛してるよ」
「え? んっ___!?」
太宰さんに、キスされた。
頬や額にされたことは何度かあったけど、そうじゃない。唇に、されてる。
一度だけじゃない。角度を変えて、何度も何度も。舌を入れないキスをされた。
「だざい、さ……ん」
苦しくなって、合間を縫って太宰さんの名前を呼んでも太宰さんは無言のまま。
あ、駄目だ。
そう本能が感じた瞬間、くらりとお酒がまわり、今度は本当に意識がシャットアウトした。
……どうか明日、この記憶がありますように。
そう願って、私は眠りにつく。
「君が明日、今晩のことを覚えてないことを祈ってるよ」
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時