story30*似合ってるよ ページ35
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試着室に入って、はやくも10分が経過した。
私は現在、身動きがとれずにいる。
さすがに「まだ?」なんて言葉はかけられていないけど、どう考えてもまたせてる。
とうに着替え終わってるんだから、早く出なきゃ。
そう思ってはいるんだけど…………
絶っっっ対!! 似合ってない!!
鏡に映ったピンクのふわふわのスカートに身を包む自分の姿を見て、思わず涙がこぼれそうになる。
似合ってない!! まさに馬子にも衣装!!
服だけ豪華で来てる私が冴えないんだ。てことで、太宰さんの前に出たくない。
そう、思っていた時。
「A」
「っ、だ、太宰さん……」
一言、名前を呼ばれただけだった。
けど、太宰さんは心配してるのかもしれない。もしかしたら、何かあったのかもなんて思ってくれているかもしれない。
勇気を振り絞って、カーテンを開けてみる。
「…………」
「き、期待を裏切る似合わなさ……ですけど……」
私の姿を見るなり黙り込んでしまった太宰さん。
恥ずかしすぎてろくに目も合わせられず、顔を真っ赤にして言葉を重ねる。
「あの、その……綺麗な服ですけど、私には絶対似合いません……!」
「…………」
「やっぱり、プレゼントなんてして下さらなくても」
「A」
もう一度名前を呼ばれて、ハッとする。
目の前の太宰さんは、見たことないくらい優しい笑顔になっていた。
「似合ってるよ」
「………っ!」
彼の言葉が、私を救いあげる。
たった今まで自信が全くなかったのに、太宰さんがそう言ってくれるだけで、本当にそうなのだと思ってしまう。
そうだ。私が考えるべきは、似合っているかそうでないかではないんだ。
「それにする……?」
先程とは違う、少し試すような笑み。
多分私がやっぱり似合わないからいらない、と言えば太宰さんは無理強いはしない。
でも、そうじゃないんだ。
「太宰さんが、気に入られたなら。」
私はそう言って、薄く微笑んだ。
私にとって一番重要なのは、太宰さんが私に似合うって言ってくれたこと自体なんだ、
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時