私の命で。【マクロスΔ】

【３】 ページ5

Aside

ヴァールだ。ヴァールシンドロームが発生したんだ。

ヴァールシンドロームは、人々が突然自我を失い、凶暴化する謎の奇病だ。

つまり。私は、ここにいたら死ぬ。

逃げなきゃ。本能的にそう思った。

そう、思うのに。身体が動いてくれない。

生きたい。

そう、私は生きたいんだ。死んでしまおうと思っていた私が、今は生きたいと思っている。ワルキューレの歌のおかげだ。

まだ身体は動いてくれないが、少し冷静に考えられるようになったので、深呼吸をして辺りを見回してみた。

まだ小さい、5、6歳ぐらいの女の子が泣き叫んでいた。母親とははぐれてしまったのだろうか。
見ると、女の子のすぐそばまでヴァールになった人が迫っていた。

あの子にもあの子の人生があって、ここで死ななければ、色々な未来が待っているのだろう。

……助けなきゃ！！

瞬間、飛び出していた。

今まで動かなかった身体が簡単に動いて、ああ、私は逃げるよりも何よりも、この子を、他の人を助けるということをしたかったんだな、と気づいた。

生きたい。でも、助けたい！

無言で女の子を抱き抱え、驚いている女の子を包み込むようにして走った。

だか、もう街は既に戦場。建物はところどころ壊れていて、至るところに瓦礫が散らばっていて、走りづらい。

悲鳴も爆音も聞こえ続けているし、走ったところでこの子も私も助からないかもしれない。でも、今、私ができるのは、走り続けることだけだ。

その時。

「It's show time！」

聞き覚えのある、美しい声が聞こえた。

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