私の命で。【マクロスΔ】

【１７】 ページ26

Aside

次に目が覚めたのは、警報の音が鳴ったからだった。
この警報の音は……ヴァールだ。ヴァールが発生したんだ。

目に映ったのは、明るくなった外と、焦る人々の姿。
みんなの様子から見て、近くで発生したんだろう。

リアンちゃんの様子を急いで確認すると、リアンちゃんも今しがた起きたところのようだった。

私は無意識にリアンちゃんを自分の後ろに隠れるように引き寄せると、状況がまだ理解できていない様子のリアンちゃんに、こう言った。

「ヴァールが出たみたい。それも、近くで。落ち着いて、安全な場所に移動しようか」

リアンちゃんは、驚きながらも、こくん、と頷いた。

どこで発生したんだろう。そんなことを考えながら移動していると、リアンちゃんが転んでしまった。

見ると、ヴァールが転んだリアンちゃん目掛けて襲い掛かろうとしていた。

どこから来たのか、とか、そんなことを考えている暇は無かった。

私はとっさにリアンちゃんを突き飛ばし、ヴァールの目の前に倒れ込んだ。

あぁ、終わるのかな……私の人生。
リアンちゃんを守れて……良かった。

……いや、違う。

ここでリアンちゃんを庇ったところで、ヴァールは暴走を続けるだろうし、私が居なくなった世界で、ひとりぼっちのリアンちゃんを導いてやれる者が出てくる可能性は、少ない。

なら。

私が、ヴァールを、歌で治すことが出来たら。

覚悟を、決めろ。

大切なものを、私は守りたいんだ。

そう思い、私はしっかりと息を吸い、緊張と恐怖で震えた声で、ゆっくりと歌い始めた。

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