本音 ページ31
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「あのな、A」
聞き慣れた、柔らかい声が、優しく私の名前を呼ぶ。顔を上げれば、優しく涙を拭ってくれた。その優しい声、表情、動作が、私をまだ見捨てていないことを表していて、折角拭ってくれた涙がぽろぽろと溢れてきた。
「そんなに自分を責めたらあかんよ」
「…………でも」
「でもじゃない。Aはなんも悪くない」
「私、センラさんを信頼してなかったんですよ」
「それが別れる理由になる? もう、誤解も解けたやろ。はい仲直り、くらいでいいんとちゃうかなぁ」
あやす様に、諭すように。頭を撫でられる。私の髪に指を滑らせ、時折くるくると弄る。
「……それに、俺もほんまに悪いことしたし。ごめんな」
蜂蜜色の瞳が静かに伏せられた。思わずブンブンと首を振って、センラさんは何も悪くないです! と否定してみるものの、あまり効果は無さそうだ。
「俺達、こんなに付き合ってるのにあんまり本音で話し合わんかったんかもなぁ」
静かに反響したその言葉には、私も心当たりがありすぎた。
「これからはお互い思ってることちゃんと言い合いたいな。ふたりで1歩ずつ、一緒に歩いていきたいねん」
「重い」と思われるのが嫌で、星野さんのことを何も聞けなかった私。
私を不安にさせたくなくて、星野さんに猛アプローチされていることを何も話さなかったセンラさん。
お互いが、自分を守るために、相手と向き合うことができていなかった。
『私、まだセンラさんの彼女でいていいんですか?』
今までの私なら、言っていた言葉を飲み込んで、真っ直ぐ彼の瞳を見た。
「私、ずっとセンラさんといたいです」
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すずらん(プロフ) - 気まぐれさんさん» 1年前から読んでいて下さりありがとうございます(;;) 他の作品まで! 嬉しいです!!(;;) とても励みになります、ありがとうございました◎ (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます(;;) 必ず完結させるつもりですので、待っていてもらえるととても喜びます◎ (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 雨宮しおりさん» 1年前から読んでいて下さりありがとうございます!!(;;) 私よりも遥かに文章力のある方に褒めて頂けてにやけてしまいました。雨宮しおり様も執筆活動の方頑張ってください!(*^^*) (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - るなさん» ありがとうございます!(;;) 大好き、応援してる、等すべて励みになります! 更新が遅いにも関わらず、待っていていただきありがとうございました! (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
気まぐれさん(プロフ) - 一年前から読ませてもらってます!!すずらんさんの他の作品も好きなので楽しみに待ってました!!続きのお話しどうなるんだろうと不安に思いつつ、楽しみに待っていたのでまた更新されて嬉しいです!!作者様のペースで無理せず頑張ってください!! (2021年6月22日 6時) (レス) id: 29504c3438 (このIDを非表示/違反報告)
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