不安 ページ19
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新入社員が入ってから1週間が経った。だんだんと皆慣れてきて、成長した姿に嬉しく思った。
「営業課朝礼終わりました」
「はーい、お預かりしますねー」
営業課の先輩と楓先輩が会話しているのを横目で見つつ、デザイン課の人がボードを持ってきたのでそちらを受け取る。持ってきてくれたのは前保険証を忘れていた子だ。それからその話は何故だか広まって、『ほけんしょくん』なんてあだ名がついた。可哀想に。でもかわいらしくて素直でいい子だ。
「ありがとう。預かりました」
「あ、Aさん! 営業課の金髪のイケメン先輩とお付き合いしているって本当ですか!?」
「へぁっ!?」
「ほけんしょくんじゃん。なになにAのこと狙ってんのー?」
話に割り込みにきた楓先輩が、私の肩に肘を置きながらニヤニヤと笑った。
ほけんしょくんはリスみたいにくりくりした瞳を更に大きくして、ブンブンと首を振った。そこまで否定されたら逆にショックです。
「いや、そんな! ただ、俺は星野に聞かれて……」
「え、星野さん?」
ほけんしょくんから出てきた名前に、びっくりする。彼が言うには、大学が一緒で特別仲がいいわけでは無いが、まだ話すほう とのこと。
「センラさんとはお付き合いさせてもらってるよ。でもそんなに広める話じゃないし……」
「分かりました。じゃあ僕からは何も言わないようにしますね」
「偉いなぁほけんしょくん! えらいえらい!」
楓さんに頭を撫でられてえへへと笑う彼はめっちゃ年下属性。小動物系男子。モテるだろうなぁ……。
ほけんしょくんが去っていくと、楓さんは真面目な顔をして私と向き合った。
「星野さん悪女説、かなり濃厚じゃない?」
「…………違うと信じたいんですけどね」
私も少し思っていた。けれど、違うとまだ信じている。彼女はまだセンラさんが私と付き合っていることを知らない。彼女がセンラさんに気があるのはほぼ確定だとは思うけれど、センラさんが彼女持ちなんてことを知らないのならばただの恋する可愛い乙女だ。
「『折原さんってAと付き合っているんですか?』って聞くのはもうほぼ好き確定だね〜」
「センラさん、モテるなぁ……」
営業課のボードに『外回り 折原 星野 11:00〜』という表記がされていて、憂鬱な気分になった。
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すずらん(プロフ) - 気まぐれさんさん» 1年前から読んでいて下さりありがとうございます(;;) 他の作品まで! 嬉しいです!!(;;) とても励みになります、ありがとうございました◎ (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます(;;) 必ず完結させるつもりですので、待っていてもらえるととても喜びます◎ (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 雨宮しおりさん» 1年前から読んでいて下さりありがとうございます!!(;;) 私よりも遥かに文章力のある方に褒めて頂けてにやけてしまいました。雨宮しおり様も執筆活動の方頑張ってください!(*^^*) (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - るなさん» ありがとうございます!(;;) 大好き、応援してる、等すべて励みになります! 更新が遅いにも関わらず、待っていていただきありがとうございました! (2021年7月17日 1時) (レス) id: 21d573643c (このIDを非表示/違反報告)
気まぐれさん(プロフ) - 一年前から読ませてもらってます!!すずらんさんの他の作品も好きなので楽しみに待ってました!!続きのお話しどうなるんだろうと不安に思いつつ、楽しみに待っていたのでまた更新されて嬉しいです!!作者様のペースで無理せず頑張ってください!! (2021年6月22日 6時) (レス) id: 29504c3438 (このIDを非表示/違反報告)
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