ひとめぼれなんてこんなもん【赤】 (ページ9)

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『じゃ、やろっか。』

赤「はい！」

いつのまにか濱田先輩と桐山先輩もいなくなってて、気づけばくり先輩と2人きり。

2人で向かい合って椅子に座る。

緩む頬に鞭打ってなんとか真顔を保つ。

昨日の今日でこんなに人を好きになるとは。

一目惚れ恐るべし、やな。

『もうクラスの人の名前とか覚えた？』

赤「まだまだですよ…女子とか全然。」

『まだ話してない子も多いでしょ？』

赤「そうなんですよ。顔と名前が一致しないっていうか…」

『ま、これからだもんね！』

赤「そうっすよね！」

会話も弾んで、割といい雰囲気…？

赤「そういえば、なんで昨日くり先輩あんなところにおったんですか？」

『あー、あれね…』

くり先輩が苦笑いしながら頬をかいた。

『実は入学式に必要な資料を教室に置いてきちゃってね。淳太くんに取りに行ってこいー！って言われちゃったんだよね。それで取りに行って帰る途中でしげくんを見かけたから…』

赤「そうだったんですか。」

『私、淳太くんの言うこと聞いて後悔したことないんだよね。』

赤「…へぇ」

『淳太くんってね、3年で1番頭いいんだよ！私もたまに勉強教えてもらってるの！』

赤「すごい、ですね…」

あっという間に明太子の話になってしまった。

くそっ！これじゃあ自滅だ！

なんとか話題を変えたい…！

そんな思いで生徒会室を見渡す。

部屋の端にある花瓶が目に止まったので、それを指差す。

赤「あ！あの花瓶の花って」

『うん？』

赤「…っあ、」

会話の流れを遮って無理矢理話題を変えようとしたけど、途中で声が出なくなってしまった。

くり先輩が明太子の話をするとき、

すごく幸せそうな顔をしていたから。

『どうしたの？』

赤「…い、え。あの…」

『あ！あの花？あれコチョウランだよー！淳太くんがくれたんだけどね、どうせならここに飾っておこうかなって』

これは、絶対に気づかないほうがよかった。

気づきたくなかった。

あぁ

世界って残酷だなぁ。