嘘つきプリンス 《片寄涼太》

Prince 20 ページ20

side 涼太









北ちゃん


吉野北人




…こいつは昔から全然読めない。

ミステリアスな雰囲気なんて1ミリも発してないのに。

その真っ直ぐな瞳からは、

芯の通った意志が見えた気がするんだ。



今でいえば、

俺の先輩に手を出すな。的な。




そんな好意には全く気づいてなさそうな、

アホな俺の偽彼女。


そんなことより周りのざわめきから、

早く開放されたいって顔してやがる。


そりゃそうだ。

俺と1年の中で人気者の北ちゃんが、

1人の女を取り合ってるようにしか見えねえもん。




大変だねえ…A。笑

ま、人事に過ぎないけど。



とりあえず…帰るか。

俺も早くこいつ送って帰りてえし。









「ま、とりあえず帰ろう。北ちゃんも自転車取っておいで」

「…はい」

「Aも。」

「うん…」







隣同士にとめた自転車を2人出して、

奥の1年生の駐輪場から北ちゃんが来て、

三人揃って駐輪場を出る。



駐輪場を出るとすぐ近くに門があって学校の敷地内から外れる。

そして毎年春には桜が咲く細くて長い道を通過すれば、分かれ道。


右と左に分かれてるんだけど、

俺と北ちゃんは右。







「Aはどっちだっけ？」

「あ、左！」





…真反対、そりゃ当たり前か。








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