初恋サクラ《佐野玲於》 (ページ44)

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☆ ページ44

side A

ほんの数分だった。

佐野くんとの電話。

耳元で聞こえる声は

いつもと少し違って聞こえて

なんだか新鮮で

ずっとずっと聞いていたかった。

「…会いたい」

思えば思うほど

ただただ苦しくなる。

これが恋だって

ナギサは言ってたけど

こんなに苦しいなら

好きになんてならなかったら良かった。

夜ってやだな。

いつも以上に卑屈になって

私が私でいられなくなる。

そんな時。

置いていたスマホがまた震えて

着信画面にはナギサの名前。

「もしもし」

「ごめん急にかけちゃって」

「ん？どうしたの？」

「大したことじゃないんだけどね…」

「何、怖い」

「佐野ってモテてんだね」

「え？」

「風の噂っちゃ噂なんだけど、うちのクラスのアヤカちゃん、わかるよね？」

アヤカちゃん。

クラスでも目立つ方で

どっちかっていうと可愛い方で

明るくて話しやすい

私も選択授業が同じだからたまに話す。

「アヤカちゃんさ、佐野のこと好きっぽい」

「え…」

「あの2人すごい仲いいんだよ最近、知ってる？」

「知らない…」

可愛くて明るい

そんな子が佐野くんを好きだなんて

やだな、勝てっこない。

…勝つつもりなんて、ないけど。