初恋サクラ《佐野玲於》 (ページ28)

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☆ ページ28

side A

「Aちゃんと俺って逆方向か、電車」

「そうそう。真逆真逆。」

たわいもない会話

仲良くなるための第一歩…だなんて

勝手に思ってます。佐野くんごめんなさい。

たまに笑ってくれる佐野くんが

とてつもなく愛おしくて

ずっと見ていたい、そう思った。

「あのさ」

「ん？」

「…ナギから聞いたんだけど」

「ナギサ、から？」

…ナギって呼んでるんだ。

ズキって胸が痛い。

馬鹿。ただ羨ましいだけ。

落ち着け、私。

「Aちゃん、中学の時も色々あったんでしょ」

「え…」

色々

言葉を濁すようにそう言うのは

あまり明るい話じゃないから

今回の長岡の件に似たようなこと

中学の時もあった

男子に注意しただけで

拡散される悪口

…知られたんだ、佐野くんに。

「その話聞いて、俺、お前のことっ…」

佐野くんの言葉を遮るようにバスが揺れた。

「わっ」

「あっぶね」

窓側に座る佐野くんと

通路側に座る私。

思わず通路に出そうになった私を守るように

佐野くんが肩を引き寄せた。

私の右肩に、佐野くんの手。

がっつりくっついてる佐野くんの右肩と私の左肩。

「い、今こっち見んな」

そんな声が耳元で聞こえて

まただ。ほっぺたが暑い。