Distance...

14 side M ページ14

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「どういうこと？」


「この間初めてお客さんとしてウチに来たんだよ。本当は旦那さんと来る予定だったんだけど…都合が悪くなって1人で」


「その人キャンセルしなかったんだ」


「ずっとウチの料理を食べたいって思ってくれてたみたいで。2人分の代金支払うから自分だけでもいいですか？って。しっかり2人分食べてた」


「おお…」


「美味しそうに食べてるのに苦しそうに泣いててさ。なんか、ほっとけなくて。気づいたら声掛けてた。それで閉店後に待ち合わせして、涙の理由を聞いたんだ」


「うん」


「それ聞いて助けたいって思っちゃって。何もできないし彼女が助けてほしいって思ってるとも限らない。でも、初めて会った俺に話してその間もずっと泣いてて、それって幸せって言えるのかなとかさ」


「舘さん…」


「思い込みかも」


「思い込み？」


「私は幸せなんだっていう思い込み。状況を変えたら未来がどうなるかわからないでしょ？今より不幸な道になるかもしれない。そう思ったら今を手放せないから、今が幸せって思うしかないっていうか」


「…」


「女の人って目先のことよりもっと先の未来を考える事が多いから。マイナスにもなりやすいし。不安だから無難な道を歩きがちなのよ」


「無難な道、」


「勇気がないの。幸せが見えなきゃ、危険な道は選べない」



美紅ちゃんの言葉に納得した。


男の俺でも目的がない限り危険な道をわざわざ選ぶことなんてしない。


もしも彼女が美紅ちゃんの言うように思い込みの幸せを過ごしているとしたら…。


やっぱり憶測だけじゃなにもできない。


彼女からのSOSがないと。


でもそれを俺に伝えてくれる保証もない。


ただただ待つことしかできないんだ。

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