推しに恋して (ページ9)

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あの時みたいに大きな手が伸びてきて頭を撫でられるのかと思いきや汗で張り付いた前髪を直してくれる。

私の汗が推しの手に…！

急いでハンカチを取り出して彼の手を拭いた。

「んふ、別に大丈夫なのに」

「ダメです。ラウールさんの手を私の汗で汚すわけには」

「俺そんな神聖な人じゃないんだけど」

「私にとっては神聖というか国宝なので」

「いや大袈裟すぎる」

「そんなことないです」

ラウールさんはちょっと待っててと日陰になったベンチに置いてあるクーラーボックスからペットボトルを3本取り出す。

そして私にくれた。

「スポドリ多めに持ってきてたの。暑いから水分補給しながら見てね。お友達にもどうぞ」

「ありがとうございます」

「試合中は俺じゃなくてちゃんと都夢のこと見てあげてよ？」

「みっ、見ます！大丈夫です！」

「ふふっ。そう？」

私は頭を下げて友達ともとへ戻った。

スポドリを渡すとニヤニヤしている。

「なーんかイチャイチャしてませんでした？」

「頭よしよしされてた気がするんだけど」

「…前髪、直してくれただけ」

「汗でペタペタになった前髪をなんの躊躇いもなく直してくれる」

「さらには私たちの飲み物までくれる」

「やっぱり推しにしとくのはもったいない！」

「そう言われても…」