推しに恋して (ページ46)

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＿

「はい、到着でーす」

「…」

「Aちゃん？」

「…送ってくださって、ありがとうございました」

「いーえ」

帰りたくない。

まだ一緒にいたい。

「もー…」

「わっ、！」

突然ラウールさんが距離を縮めてきて片腕で私を抱き寄せてきた。

そして後頭部をふわふわと撫でる。

「そんな寂しそうな顔されたら俺まで離れ難いじゃん」

「…」

「まあわかるけどね。楽しいことがあった後のお別れっていつもより寂しさ増すもんね。けどまたすぐ家庭教師しにくるから」

「…はい」

力強くゆっくりとした彼の心音は私の心を穏やかにしてくれた。

「よし、じゃあ離すから。笑顔でまたねしよ」

再び視線を合わせて、言われた通りに笑顔をつくった。

「うん、いい笑顔。100点だね」

ふと背後からヒールの音がして振り返る。

ひとりの女性と目が合った。

いや、正しくは私の奥にいるラウールさんを見てる。

「英里、」

小さな彼の呟きを私は聞き逃さなかった。

「ラウくんじゃない。久しぶり」

「…うん」

近づいてくる彼女はおそらく私より10cm以上身長が高い。

「こっち、帰って来てたんだ」

「一昨日ね〜。会社の遅めの夏休み？って言っても用事あるから明日の朝には帰るけど」

「そう」

「…ラウくんってさ」

「ん」

「妹いたっ、け？」