推しに恋して (ページ38)

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「町内の人たちの安全を守るのも俺たちの仕事だ。頼んだぞ、ラウ」

「わかりました」

「送り届けたら署までダッシュな」

「…大魔王」

「唐揚げ食ってんの見たからな俺。先輩たちみんな我慢してんのにな？」

「いやいや！あれは！Aちゃんがどおーしても！食べてほしいって！ご厚意ですよ！」

「…ほんとに？」

私は照さんの目を見て何度も頷いた。

そのまましばらく見つめあっていたら、突然照さんが吹き出して笑う。

キリッとした目つきで男らしいのに笑うとかわいい。

ギャップに思わずキュンとした。

それと同時に、こういうことかと納得する。

私もギャップでラウールさんをキュンとさせたい。

ギャップの正解がわかっても相変わらず実践できそうにはないけど…。

「あーもう…おもしろ。Aちゃんすごい必死だったわ。よかったな、ラウ。今回は守られたな」

「…送ってきます」

「おお、頼むな」

「ラウールさん、Aのことよろしくお願いします」

友達と他の消防士さんたちに見送られながら会場をあとにする。

今日の無言は気まずい空気が流れている。

でもこういう時に話題をつくって話しかけることができない。

どうしようと考えているうちにもう家が見えてきてしまった。