推しに恋して (ページ35)

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「ここでいいなら」

「…！ありがとうございます」

ラウールさんと一緒なら場所なんてどこでもいい。

「ラウ、こっち座りな。Aちゃんも慣れない下駄でずっと立ってるの疲れるでしょ」

「ありがとうございまーす。Aちゃん、座ろ？」

「…はい」

照さんに甘えてベンチに並んで座る。

他の消防士さんたちは照さんに肩を組まれて少し離れた位置に集まる。

気を遣わせてしまったかもしれないとそっちを見ているとラウールさんが私の肩を叩くから反射的に振り返った。

ぷす、と指が頬にささる。

典型的なそれに騙されて恥ずかしい気持ちとラウールさんに触れてもらえて嬉しい気持ちと、なんだか複雑だった。

「…怒った？」

「怒ってません」

「よかった。ねぇ、何食べたの？」

「ポテトとチーズハットグと、これです」

「いいなぁ〜。俺はここでずっと、目の前に餌置かれてるのに永遠に待てって言われる犬の気持ちに共感してたよ」

私は手元の唐揚げに視線を落とす。

「食べ、ます？」

「え、」

「あ、照さんたちに怒られちゃいますよね。あはは…」

「くれるの？」

「！」

「いやぁどうしてもって言うならさ、ご厚意は受け取らないと逆に失礼かなって思うよね。うん」

目を輝かせるラウールさん。

よっぽどおなかが空いてるのか。

そりゃそうか。

今の彼はずっと待てされてる犬と同じなんだもんね。