推しに恋して (ページ33)

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「この間来てた子たち？」

「はい、そうです」

ラウールさんの隣に並んだのは、彼に負けないくらい高身長の消防士さん。

「この子が勉強見てあげてる子です」

「あー、休みの日に家庭教師してるって言ってたね」

「この方はすっごくお世話になってる先輩の照さん」

「お世話になってる先輩…」

もしかして前に話してた…。

「大魔王？」

「Aちゃんそれは、」

「あ、」

「大魔王…？」

ラウールさんは慌てふためいて照さんに笑顔を見せる。

なんでもありませーんと語尾にハートでもついてそうだ。

「説明してもらおうか」

「いやいや！大魔王…よりも強い男がいるって話をしたんですよ」

「ねぇ、ラウは俺のことなんて話してた？」

「照さん！Aちゃんに聞くのはちが、」

「えーっと…ラウールさんが苦しんでる姿を」

「言わなくていいよ！うん！」

「ラウ」

「はい」

「明日非番だよな」

「はい」

「一緒にトレーニングしようか」

「…うす、」

「ごめんなさい私、余計なこと言いました…？」

照さんがその場を立ち去るまで終始苦笑いをしていたラウールさんに謝ると私の目線の高さに屈んだ。

「大丈夫。本人の前で言ってるから普通に。ノリだよ」

「…」

「ほら、友達といっぱい楽しんでおいで」

「…はい」

「っと、その前に」

ラウールさんは私の耳に唇を寄せ、小さな声で呟く。

「浴衣姿、想像以上に綺麗でドキッとしちゃった」

「！」

「…いってらっしゃい」

お団子ヘアを指でつんとつついて楽しそうに笑うと照さんたちがいる場所へ向かう。

私も彼に背を向けて友達を見れば、顔真っ赤だよなんてからかわれてしまった。

彼もまた同じ状況だとはつゆ知らず。