想い人と憂鬱 ページ9
適当なご飯屋さんに入って2人で乾杯をする。
レポートが残っているためお酒はなしだけど。
「休み明けの会議でちゃんと報告できそうな感じでよかったな」
『相手も優しい方で話しやすくてこれはいいレポートが書けそうです!』
「ふふっ。出張、一条と一緒でよかった」
『え』
「すげー真剣に話聞いて、意見もしっかり言えるし分かんないとこは分かるまで質問してさ、感心しちゃった」
『…ありがとうございます』
「部署は一緒でもデスク離れてるし仕事してる一条を近くで見ることなかったからさ、よかったなって」
『私も、岩本さんと一緒に来れてよかったです』
仕事してる岩本さんもかっこよくて、さらに好きになってしまった。
岩本さんはにこっと笑うとふとスマホに目を落とす。
しばらく見つめて何事もなかったようにポッケにしまいこんだ。
『…大丈夫ですか?』
「うん、あとでかけ直すから」
『麻里菜さん、ですか』
「…うん」
『出てきてくださいよ』
「一条さぁ、ちょっと俺の話聞いてくれる?」
『そんな電話の後で聞きますって』
「プライベートなことなんだけど」
なんとなく麻里菜さんと何かあったんだなと察した。
『私でよければ、聞きます』
「実は昨日、夜に麻里菜と喧嘩しちゃってさ」
それで朝眠そうだったのか。
『…私と、出張に行くからですか?』
「いや…」
少し言葉を濁して考えた後に話を続ける。
「まあ、そうなんだけど」
『すいませ』
「一条は何も悪くないから。謝んないで。別にプライベートで2人きりってわけじゃなくて仕事だし、子どもじゃねぇんだからって言ったら、余計に怒っちゃってさ」
参ったね〜と苦笑いする岩本さんと痛む心に気付かないふりをする私。
『私が麻里菜さんの立場でも、嫌だって思います。だけど…お仕事だからっていう岩本さんの気持ちも、分かります』
「相手が一条だから大丈夫だと思ったんだけどな」
麻里菜さんはもしかしたら気づいてるのかもしれない。
『帰ったらすぐ会いに行って安心させてあげてください』
「大丈夫かなー」
『お2人ならきっと、大丈夫です』
私の、この気持ちに。
麻里菜さん、ごめんなさい。
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2021年2月10日 17時