夢うつつ ページ14
『え、ああ、なんか夢の中で泣いてたのが現実でも泣いてたってだけなので大丈夫です』
「怖い夢でも見たの？」
佐久間さんは心配そうにそっと私の頭を撫でた。
『いえ、怖い夢、ではないです』
「どんな夢？」
『…忘れちゃいました』
「ふふ、そっか」
佐久間さんはフラフラしている私の手を握って寝室に連れていく。
「手あっついね」
『ほんと、移りますよ…？』
「はい、布団入って」
大人しく布団に潜ると佐久間さんは冷えピタをおでこに貼ってくれてベッドの下に座る。
「昨日雨の中走って帰ったとか？」
『はい、そうです』
｢いやぁ〜いきなりだったもんね。俺が帰る時にはもうやんでたけど｣
『それは、よかったです』
「あ、照が心配してたよ〜？大丈夫かなーって」
『ありがとうございます』
「照も様子見たいって言ってたけどまりりんも一緒に帰るって言い出したから来れなかった」
『…』
｢俺も心配したよ？全然来ないからさ〜。阿部ちゃんに聞いたら、熱出した！って泣きそうな顔しててさ｣
『…ああ』
「へへ。想像できるっしょ？」
『それはもう鮮明に』
｢ごめんね。照じゃなくて、俺で｣
『いえ、佐久間さんに会えて嬉しいです』
佐久間さんは驚いた顔をしているが発言した私が1番驚いている。
『あ、えっ、と』
彼女ができたらもう会えなくなるとなんて思ってたら自然と零れていた言葉。
「およよ？佐久間さんのこと好きになっちゃった？」
『…なんでそうなるんですか』
きっと熱のせいだ。
「ごめんって」
こんなに顔が熱いのは。
｢でも、顔真っ赤だよ？熱のせい？｣
イタズラに微笑んで私の顔を覗き込む。
『すっぴんなので見ないでください』
｢かわいーよ？｣
『うるさいです』
「ありゃ？ふふ。あ、おかゆ温めてくんね」
レンジ借りまぁす！と元気よく言って立ち上がろうとする佐久間さんの手を掴む。
｢いっちー？｣
なんだか今は、佐久間さんと離れたくない。
戻ってこなかったら、なんて考えてしまう。
『あ…すいません』
だけどすぐに我に返り、佐久間さんの手を離す。
「あっためたらすぐ戻るから。待ってて」
佐久間さんは私の行き場をなくした手を両手で包むと優しくそう言った。
『…はい』
私、どうしちゃったんだろ。
熱のせい？さっきの夢のせい？
もしかして…まだ、夢見てるのかな。
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作者名：涼-suzu-
| 作成日時：2021年2月10日 17時
