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Aにとってはこれがメインイベントだもんな。
膝の上で握られた拳はイルカが技を決める度にパッと開いてまた握られる。
今回の恋こそ慎重に。
そう思ってたのに、俺の手は彼女の手を包み込んでいた。
「…!」
弾かれたように俺を見て目を泳がせる。
「ほら、ちゃんと見とけって」
「…うん」
戸惑いながらも俺の手を振り払うことなくまたイルカショーに視線を戻した。
「ではここでみなさまにもイルカタッチの体験をしてもらおうかなと思うんですけれど、体験したい方いらっしゃいますか〜?」
明るいお姉さんの声にうずうずしてるA。
「手挙げて、ほら」
恥ずかしいのかなかなか手を挙げようとしない。
だから繋いだ手を上に持ち上げた。
「しょっ、!?」
「ではそこの、手を繋いだかわいいカップルの2人に!前までお願いしまーす!」
「翔太、」
「やったな。行こうぜ」
何か言いたげな彼女の手をしっかり握って階段を降りていく。
お姉さんに言われた場所にAと並んで立った。
合図と共にイルカが水中へ潜り俺たちの前に現れると、手のひらに口先をつけて戻っていった。
「意外と柔らかい」
「…」
「A?」
「イルカ、触っちゃった」
「…よかったな」
「うん」
体験が終わって元の位置へ。
再び手を繋ぐことはなく、そのままイルカショーの続きを楽しんだ。
イルカショーが終わったら館内のレストランでお昼にオムライスを食べる。
そこはイルカの水槽の前で、ついさっきショーを終えたばかりのイルカたちが自由に泳ぎ回っている。
「すごかったな」
「やっぱりイルカかわいい」
「たしかにかわいかった」
動物は苦手だけどビビらずに触れた自分を褒めてあげたい。
Aはイルカの水槽を見て笑顔を見せた。
少しずつこうして笑ってくれるようになったのが嬉しくて俺もつられて笑顔になる。
オムライスを食べ終えて再び順路に沿って水族館を歩いた。
さっき繋いだ手が目の前で揺れている。
もう1回繋いだら拒否される?
調子に乗りすぎ?
でも繋ぎたい。
自分の中で葛藤する。
「翔太?」
「…」
「…!」
焦ってるとかそんなんじゃない。
ただ好きな子にはやっぱり触れたくて。
気持ちを伝える前にこんなことしたらアウト?
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涼-suzu-(プロフ) - みんみんさん» お久しぶりです。しょぴまるくんとよき青春恋愛ができたみたいでよかったです! (5月6日 10時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
みんみん - 久々に訪問することが出来ました!青くんの青春を一緒に堪能させてもらえて今胸がいっぱいです💙ヒロインというよりも、母の立場で感情移入しピュアで可愛い二人を応援しちゃいました。やっぱり涼さんのお話は最高ですね💘 (5月6日 1時) (レス) @page40 id: d946c1f5c6 (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 修羅さん» お久しぶりです!ありがとうございます。結局ハピエンしか書けない涼さんでした!笑 なべふかフォーエバー! (2023年4月18日 8時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
修羅(プロフ) - 久しぶりに感想書きます!めちゃめちゃ良い話でした‼︎君色コットンキャンディーと繋がってるとは思いませんでしたが…なべふか二人とも幸せになれてほんとよかったです‼︎流石のハピエン、ありがとうございます! (2023年4月18日 0時) (レス) @page40 id: 23779c598a (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 妄想女子さん» 古参や!笑 最初の方から愛読してくださりありがとうございます。これからもぜひ涼さんの事よろしくお願いしますね!!!! (2023年4月8日 21時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2023年4月2日 18時