44 ページ44
＿
「したくない?」
「した、いけど…」
「お仕事するのも楽しいかもしれないけど、他にも夢中になれるようなことがAちゃんの中で起きてる」
「…」
「好きな人とデートならどこに行ったって絶対楽しいよ」
「うん、」
「俺の魔法、効き目抜群だから」
その日の夜、翔太からチャットが来た。
"ベランダ出てこれる?"
返事を返して部屋からリビングに急ぐ。
あの人はいつものようにどこかへ行ったらしい。
「よ、」
「…よ」
ベランダの向こうからひょこっと顔を出した翔太に挨拶されて、ぎこちなく同じように返すと小さく笑われた。
「おっちゃんは?」
「…さぁ」
「んは、またいねぇの?」
「いつものこと」
「そっか」
翔太が咳払いをひとつして私を見る。
「あのさ、」
「うん?」
「あのあと佐久間とデート、したの?」
「デートじゃない。ちょっとお散歩しただけ」
「…佐久間のこと好き?」
「え、」
「あ、いや、やっぱなし、いまの。なんでもない」
「さっきも言ったけど大ちゃんはお兄ちゃんだから」
「…だよ、なうん。そうだよな」
何かを言いたげに小さく唸っている翔太。
どうしたんだろう。
「翔太?」
「来月の最初の土曜日って、休み取れたりする?」
「…大丈夫だと思うけど」
「俺ともデートしてくんね?」
「…!」
もしかしてこれは大ちゃんの魔法?
まさか本当に、しかもストレートにデートに誘われるなんて思わなかった。
「おーい、」
「ごめん…ボーッとしてた」
「で、してくれんの?…デート」
「…しま、す」
私は知らなかった。
恋を自覚するとこんなにも自分が自分じゃなくなるなんて。
今までに感じたことのない恥ずかしさとか、翔太を異性として意識しすぎてどうしたらいいかわからなくなるとか。
とにかくいろんな感情が私の中でぐるぐると回っている。
「…おやすみなさい!」
「え、ちょ、」
沈黙に耐えられなくなってベランダから逃げた。
翔太はまだなにか言いたげだったけど、顔が沸騰しそうだったから。
「あら、どうした?そんな顔真っ赤にして。熱でもある?」
いつの間にか帰ってきていたお父さんが心配そうに私に近づく。
顔を見られたくなくて両手で覆った。
「なんでもない」
「…ははーん。パパわかっちゃったぞ。翔太だろ?」
「…おやすみ!」
本日2度目の逃走劇。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1493人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「SnowMan」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
涼-suzu-(プロフ) - 白昼夢さん» はじめまして。コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。こちらこそこれからも涼さんの作品を愛してあげてくださいませ( ˶'ᵕ'˶ ) (2023年3月31日 15時) (
レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 初めまして！新作待ってました（ ; ; ）ずっと陰ながら応援させていただいて、、凉さんの作品全部読み漁るほど大好きなんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`これからも素晴らしい作品お待ちしてます！頑張ってください！！！ (2023年3月31日 0時) (レス) id: 40e11ba78b (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 茉子さん» 泣かせてしまってごめんなさい(´；ω；｀)いつも私の作品を読んでくださってありがとうございます。私も大好きです！ (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - シラユキ。さん» ツンデレとツンデレのコラボ(？)です！幸せにするんで一生ついてきてください(もはやプロポーズ) (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
茉子(プロフ) - 泣いたんですが😭子どもへの気持ち分かるだけに…続きも楽しみです。涼さんの作品全部読んでます☆大好きです😊 (2023年3月28日 18時) (レス) @page24 id: 0c861b61c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涼-suzu-
| 作成日時：2023年3月26日 15時
