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「どういうこと?」
「半分にして誰かと食べるから、好き」
「…!お父さんと食べてたんだろ?小さい頃」
「お父さんじゃない」
「はぁ。お前まだそんな、」
「本当に違う」
「え?」
「私、拾われた子だから」
俺は何も言葉が出なかった。
冗談で言っているように見えない。
俺はただ彼女を見て、瞬きを何度か繰り返すだけ。
「ユキが捨てられてた橋の下、私もそこに捨てられたの」
「…いつ、」
「産まれてすぐ」
「覚えてんの?」
「両親の顔とか全く覚えてないけど、お母さんのお腹の中にいた時とか私が産まれてすぐ何かを言い争ってたこととか…ぼんやりだけど記憶に残ってる」
テレビで見たことがある。
ある程度年齢を重ねても母親のお腹の中にいた頃の記憶が残っている人がいるというのを。
彼女はその1人だ。
「あの日は雨が降っていて、雷も鳴ってた。濡れないように橋の下に私を置いたんだろうけど…雨で川は増水。あの人がいなかったら、私は今ここにいない」
つまりおっちゃんは彼女にとって命の恩人というわけだ。
反抗期の娘が父親を煙たがるあるあるなやつだと思っていたのにまさか本当にお父さんじゃないなんて。
「なあ、もしかして今働いてるのって…」
「赤の他人の私がこれ以上迷惑かけるわけにはいかないでしょ」
やっぱりそうだ。
「…本当は行きたかったんじゃないの?高校」
「私の学力じゃ入れる高校なんてないよ」
表情で彼女のことを読み取ろうとするけれど何もわからない。
ずっと表情を変えることなく淡々と話し続けている。
「おっちゃんはAのこと、赤の他人なんて思ってない」
「…」
「本当の娘だと思ってるよきっと」
「…それは、痛いほどに伝わる」
「だったら家族でいいじゃん。お父さんと思って接してあげなよ」
黙って俺を見た彼女に、軽率な発言をしてしまったかもしれないと思ったけれど、そうだよねぇと他人事のように呟いてソファーに全体重を預けた。
「でも難しいんだ、私には」
やっぱり彼女の気持ちは汲み取ってあげることができなかった。
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涼-suzu-(プロフ) - 白昼夢さん» はじめまして。コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。こちらこそこれからも涼さんの作品を愛してあげてくださいませ( ˶'ᵕ'˶ ) (2023年3月31日 15時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 初めまして!新作待ってました( ; ; )ずっと陰ながら応援させていただいて、、凉さんの作品全部読み漁るほど大好きなんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`これからも素晴らしい作品お待ちしてます!頑張ってください!!! (2023年3月31日 0時) (レス) id: 40e11ba78b (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 茉子さん» 泣かせてしまってごめんなさい(´;ω;`)いつも私の作品を読んでくださってありがとうございます。私も大好きです! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - シラユキ。さん» ツンデレとツンデレのコラボ(?)です!幸せにするんで一生ついてきてください(もはやプロポーズ) (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
茉子(プロフ) - 泣いたんですが😭子どもへの気持ち分かるだけに…続きも楽しみです。涼さんの作品全部読んでます☆大好きです😊 (2023年3月28日 18時) (レス) @page24 id: 0c861b61c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2023年3月26日 15時