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こんな風にチェーンが外れてもタイヤがパンクしてもすぐに元通りにしてくれた。
正直かっこいいなと思った。
もう大丈夫だよと笑いかけてくれたあの人に、あの頃の私は今と変わらず無愛想だけどありがとうとちゃんと言えていた。
いつからか、あの人にだけ言えなくなった。
「直った」
「…!はや、」
「乗ってみて」
彼が自転車に乗り敷地内を少し走る。
「大丈夫そう。ありがとう」
口角をふにゃりとあげてそう言った彼に胸の奥が苦しくなった。
それにより歪みそうになった顔を隠すように彼に背を向ける。
「ねえ」
「なに?」
「その子猫、飼うの?」
「うん」
「…そっか」
「病院連れて行った。特になにもなく健康だって」
「…!それはよかった」
「名前は?」
「え、」
「あんたの名前」
「…渡辺翔太」
「翔太のおかげでこの子を助けられた。ありがとう」
「あ、ちょっ…」
私を呼び止める翔太の声は聞こえないふり。
事務所の中に入ってドアを閉めたらその場にズルズルとしゃがみ込んだ。
ケージの中の子猫はそんな私をジッと見つめる。
「帰ろうか」
私服に戻って家まで歩いた。
「おかえりなさい〜」
「…」
家に帰ればあの人は帰ってきていて、ソファーで寛ぎながらコーヒーを飲んでいた。
「ただいま、」
「…!うん、おかえり」
私からのただいまが余程嬉しかったのかそう繰り返した。
「さくちゃんに病院連れてってもらったんでしょ?どうだった?」
「健康に問題はないって」
「そうか。そりゃよかったな」
「…飼っていい、?」
「もちろん。家族が増えることはいいことじゃん」
家族。
その言葉に胸が苦しくもなりあたたかくもなった。
「名前は決めたの?」
「まだ」
「俺、めちゃくちゃいい名前思いついたの。この子にピッタリの!」
「なに」
「オッドちゃん」
「…は?」
「オッドアイだから、オッドちゃん。どう?どうよ?我ながらてんさ、」
「ダサい」
私は子猫を連れて部屋にこもった。
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涼-suzu-(プロフ) - 白昼夢さん» はじめまして。コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。こちらこそこれからも涼さんの作品を愛してあげてくださいませ( ˶'ᵕ'˶ ) (2023年3月31日 15時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 初めまして!新作待ってました( ; ; )ずっと陰ながら応援させていただいて、、凉さんの作品全部読み漁るほど大好きなんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`これからも素晴らしい作品お待ちしてます!頑張ってください!!! (2023年3月31日 0時) (レス) id: 40e11ba78b (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 茉子さん» 泣かせてしまってごめんなさい(´;ω;`)いつも私の作品を読んでくださってありがとうございます。私も大好きです! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - シラユキ。さん» ツンデレとツンデレのコラボ(?)です!幸せにするんで一生ついてきてください(もはやプロポーズ) (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
茉子(プロフ) - 泣いたんですが😭子どもへの気持ち分かるだけに…続きも楽しみです。涼さんの作品全部読んでます☆大好きです😊 (2023年3月28日 18時) (レス) @page24 id: 0c861b61c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2023年3月26日 15時