プリンセスと9人の騎士

episode:20 ページ21

その明日がやって来た。

静寂に靄が立ち込める中、聞こえるのは馬の足音。

｢舘様、なんで白馬なん？｣

｢え？俺の馬はずっとダイヤだよ｣

｢ダイヤ…何カラットなん？｣

『そこ広げなくていいから』

｢わぁ！Aちゃんの馬、真っ黒！｣

｢ダークホースやん｣

『…まあね』

｢否定しないんや｣

｢みんな、準備はいいか？｣

先頭に立つ照が後ろを振り向く。

｢絶対に、国王を連れて帰るぞ｣

照の言葉にみんなが頷いた。

｢行くぞ…！｣

照に続いてみんな走り出した。

父上、どうか無事で待っていて。

必ず助け出すから。



フラム王国までは長い道のりで、この靄だと5時間は絶対にかかる。

まあそんな簡単に辿り着かない。

分かってる。うん、分かってた。

走り始めてまだ1時間なのに立ちはだかる第1の壁。

とんでもない山道。

アップダウンが激しく馬たちがすぐに疲れてしまわないか心配だ。

険しい道で思うようにスピードも出せない。

｢ここから先道が狭くなってるから気をつけてね｣

先頭の照の声がみんなの気を引き締めてくれる。

｢もう少しだよ〜！頑張ろ〜！｣

1番後ろから元気に声をかけてくれる佐久間。

なんとか山道を抜けた頃にはみんなヘトヘトだった。

｢1回休憩しよ｣

丁度いい広場を見つけてみんなで馬から降りて休憩。

｢姫、お手をどうぞ｣

馬から降りようとすると先に降りていた舘さんがエスコートしてくれる。

『お、降りれるよ…』

そう言っても手を下げようとしない舘さんの手を取り、馬から降りる。

そして蓮が私の乗っていた馬を回収して、ご飯を与え始める。

｢おいしい？そっかおいしいか、うんうん。いっぱい食えよ｣

｢めめが馬と会話しとるで｣

『いいなぁ、、愛情いっぱい』

｢お？姫さん嫉妬かいな？｣

『え、してないしてない！』

｢私もめめに愛されたいわぁ〜…って？｣

『言ってない！康二のばか！』

｢あ〜あ、康二、姫怒らせちゃったぁ｣

｢姫、まあ落ち着いてください｣

舘さんが私の隣に来て温かいハーブティーを出してくれた。

どこから出したの…？

『ありがとう、舘さん』

舘さんの入れてくれるハーブティーは私のお気に入りで飲むと本当に落ち着いて優しい気持ちになれる。

ふと視線を感じて舘さんと反対側の隣を見るとラウールがジッとハーブティーを見ていた。

『飲む？』

｢へっ？｣

『はい、おいしいよ？』

ラウールはそっと私からハーブティーを受け取ると一口飲んだ。

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