睫毛の秘め事

03 ページ3

＿


成人式を終えたら一度帰宅して私服に着替えた。


そしてまた友達と待ち合わせをして同窓会へ。


お酒を飲んでいる人もいれば、私のように早生まれで誕生日を迎えておらずジュースの人もいる。


ラウはお酒を飲みながらバカなことしてる男子を見て当時と変わらない高い声で笑っていた。



「男どもはちっとも変わらんな」


「ふふ、和香菜なんかおじさんみたいだよ」



ビールを片手に騒いでいる男子を見て鼻で笑う和香菜。


少し顔が赤くなっている。



「ラウくんと話さなくていいの?」



和香菜だけは私とラウの現状を知っている。


当時、彼女に泣きながら相談したから。



「話したい、けど」


「よし。和香菜サマに任せときなさい」


「え、ちょっと」



ビールを持って立ち上がった和香菜が男子の群れへ突き進む。


隣のテーブルの女子たちに混ざるついでにラウに話しかけて、彼が私を見た。


そして彼は私から目を逸らすことなく少しだけ何かを考えてゆっくりと立ち上がった。


だんだん近づいてくる距離に比例して心拍数は上がっていく。



「久しぶり」



ごく自然に私の隣に座ってタッチパネルを操作する。



「何飲んでるの?」


「グレープフルーツジュース」


「お、いいねぇ。俺もそれにしよーっと」



声変わりによって低くなった声が脳内に響く。


ふわっと漂ってきた彼の匂いは変わらなくて、鼻の奥がツンとした。



「乾杯しよ」


「あ…うん」



すぐにやってきたジュースを持って私のに近づけてカチッと音を鳴らした。


あれ、私ラウとどんな風に話してたっけ。


何事もなかったかのように、いつも通りに話しかけてくれてるのに言葉が出てこない。


ごめんね。


元気だった?


今どこでなにしてるの?


さっき友達が彼女いるのかなって言ってたよ。


全部、喉の奥でつっかえている。

04→←02

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す