睫毛の秘め事

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「で、結局のところ今日はいつもよりご機嫌なの?」



休憩時間が終わって店内に出たら岩本さんにそう聞かれた。



「ご機嫌です」


「いやご機嫌なんかい」


「んふふ、はい」


「じゃあ真子さんたちの言ってること、間違ってないじゃん」


「はい」


「はいって…」



いひひと笑ったら何ともいえない表情を浮かべられてしまった。



「なんかね、親友兼幼馴染みくんとまた連絡取れるようになったことが嬉しいんだって」


「幼馴染みくん?」


「高校の時に付き合ってた彼氏に連絡先消されたんだってよ。ありえないよね、恋人っていうか人として?勝手に彼女の友達の連絡先消すとかさ。やばいよ普通に」



休憩いってきまーすと岩本さんの肩を叩いて真子さんが去っていった。


気まずそうな顔の岩本さんが視線を宙に泳がせる。



「大丈夫ですか?」


「あー、うん。幼馴染みくん?よかったね連絡取れるようになって」


「はい。中学卒業してから向こうが県外に引っ越して会えない上に連絡先消されて絶望だったんですけど…昨日の成人式で再会して」


「そっか」


「…岩本さん?」


「いやなんつーか。過去の話だけど、俺もそういう時期あったなって。過去の話ね、本当に」


「そういう時期、」


「彼女のスマホに入ってる男の連絡先、俺と家族以外は消してってお願いしたことある。で、彼女が本当に消したか、確認するっていう…」


「…」


「まじで引かないで。過去の話。今はちがう」


「引いてませんよ」


「失ってから気づいたって遅いんだよな」


「…まだ好きなんですか?その時の彼女さん」


「結婚するって。俺の親友と」



岩本さんは未練があるともないとも言わなかった。



「俺すっげーヤキモチ妬きだし束縛激しかったの。だからこんなことになった。次の恋は…そうならないようにしないとな」



私は岩本さんが眠そうにしている理由をなんとなく察して、応援してますとひとことだけ伝えた。

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