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点滴が終わって病院を後にする。
花鈴は泣き疲れてすっかり夢の中。
「涼太あのね」
チャイルドシートに花鈴を乗せて、涙の跡がついた頬を撫でながら彼に話しかけた。
「ん?」
「思い出したの、涼太のこと」
「え、」
「ちゃんと私の記憶の中に涼太がいるの。小さい時から今までの思い出、全部に」
「ほんと…に?」
彼に笑顔を向けて頷いたら、頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまった。
「よかった…」
「ごめんね」
「別に、Aが謝ることじゃないから」
そう言った彼は少し涙声だったけれど、気付かないふりをして車に乗り、花鈴の隣に座った。
彼は大きく息を吐いて私に気づかれないようにこっそりと涙を拭くと車を発進させた。
その日の夜、花鈴を寝かせて2人でリビングのソファーに座る。
ローテーブルの上には花鈴が翔太からもらったお菓子の箱。
「これを見た瞬間に、なんか目の前が真っ白になって、今までの思い出がたくさん蘇ってきたの」
確かによくこのお菓子は食べてたけど…なんでこれを見て記憶が戻ったのかはわからない。
でも涼太は何か納得した様子だった。
「あー…なるほどそういうことか」
「え?」
「このお菓子の箱見てさ、何か思い出すことない?」
全ての記憶が戻った私は頭の中で過去へ過去へと遡っていく。
「あ」
「…思い出した?」
「うん、」
私の20歳の誕生日に、涼太と2人でお互いに宛てた手紙を書いてこのお菓子の箱の中に入れたことを思い出した。
10年後の私の誕生日に開けてお互いの手紙を読もうと約束をして。
その箱はアルバムが入った棚の鍵がかかった引き出しに入っているはず。
「…もう少し早く思い出してたら私の誕生日当日に、」
「もう…そういうことは考えないの。いいでしょ、全部思い出したんだからそれで」
「…うん、ありがとう」
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涼-suzu-(プロフ) - 橋ちゃんさん» コメントありがとうございます。私の文才なんてまだまだですがそう言っていただけてとても光栄です!もちろん反映されなかったお星様は我が家に届きましたので保管しておきますね!笑 次もよろしくお願いします︎︎︎︎︎☺︎ (2022年5月27日 21時) (レス) id: 7e38231ab5 (このIDを非表示/違反報告)
橋ちゃん - 涼-suzuさん完結おめでとうございます🎊今回も素敵な作品でした!涼-suzuさんの作品は全部神作品ですね!文才能力が素晴らしいと言うかなんと言うかとにかく最高です!今回もお星さま沢山押させていただきました!次も楽しみにしてます😊 (2022年5月27日 18時) (レス) id: 0784958bbf (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 柚姫さん» いつもコメントありがとうございます。紳士なみやだてくんに最後まで癒されてくださいませ!最後までよろしくお願いします♪ (2022年5月27日 12時) (レス) id: 7e38231ab5 (このIDを非表示/違反報告)
柚姫(プロフ) - じっくり読ませていただきました。色々気になりつつ、❤さんの紳士ぶりに癒されつつ、、、。どんな展開が続くのか今から楽しみです。涼様、素敵なトキメキをありがとうございます (2022年5月27日 7時) (レス) @page41 id: 31ed921faf (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - みんみんさん» コメントありがとうございます。嬉しいお言葉…歓喜です…。わたなべくんのツンデレは子どもさえも虜にしてしまうようですね。笑 最後までどうぞお付き合いよろしくお願いします♪ (2022年5月26日 6時) (レス) id: 7e38231ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2022年5月20日 15時