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そんなこんなで向井くんと食堂へ行くことになった。
教室を出る前2人を振り返ると口パクで頑張れって言われてしまった。
「楽しみやな〜文化祭」
「え、あ、うんっ!楽しみ、すごく」
「俺たこ焼きのプロやからなぁ〜。大繁盛まちがいなしやで」
「集客力もありそうだね」
「当たり前よ〜」
得意そうに笑う向井くん。
眩しすぎる。
食堂の自販機にたどり着いて、麗奈にいちごミルク、凛にコーラを買った。
まだお金は残ってる。
光る自販機のボタンに震える指先。
「ねぇ」
「んー?」
「私たちの分おごってくれるらしいんだけど、さ」
向井くんの気配をすぐ後ろに感じる。
「こ、康二くん、は…どれに…する?」
今は自販機の方を向いたまま言うので精一杯。
「…」
だけど何も言わない向井くんに、あれ?後ろにいるよね…?と不安になり振り返る。
「わっ!」
だけど向井くんは慌てて私の両肩を掴んでグインッと再び自販機の方に向かせた。
一瞬見えた顔は赤かったような…?
「お、俺、はるると一緒のやつにするっ」
「…わかっ、た」
オレンジジュースのボタンを2回押す。
頑張って言ってみたけど向井くんからは何の反応もなかったし、やっぱり向井くんのままのほうがいいよね。
「はい、これ向井くんの」
向井くんは受け取らずにオレンジジュースから私へと視点を変える。
もしかして、オレンジジュース嫌い…?
「向井くんやない」
「へ?」
「もう名前で呼んでくれへんの?1回だけなん?」
恥ずかしそうに唇を尖らせながら目を泳がせてそう言った。
「康二、くん」
「ありがと。…Aちゃん」
「…っ」
そう言って私の手からオレンジジュースを受け取りながら頭をぽんぽんしてくる。
食堂から教室までの道のりはなんだかいつもより近い距離で歩いている気がしてドキドキが止まらなかった。
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2021年10月4日 6時