不良少年とチョコレート

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「帰って来るなって言われたんで。…お父さんに」

 「もしかして、それはお父さんから…？」


 手当てしたばかりの傷を指させば何も言わず俯いた。

 まさか、虐待…とかじゃないよね？なんて考えを巡らせてどう言葉をかけようか迷って何も言えずにいると彼が口を開いた。


 「カッとなって、俺が先に手ぇ出しました」


 なんだ…親子喧嘩か…。


 「結構激しめの親子喧嘩したんだね…？」

 「…ウザかったんで」


 自分が高校生だった頃のことを思い出す。

 反抗期真っ只中だった私はお父さんとお母さんに何か言われればウザいって思ってた。

 とにかく家にいるのがいやで友達の家にしょっちゅう泊まりに行ったりなんかして。


 「あるよね、そういう時」

 「…！」

 「言われなくたって分かってるよ！って言いたくなるようなことばっかり言ってきてさ。ほっといてくれればいいのにーって」

 「…俺、高3で…まだ進路決まってなくて」

 「それをお父さんに言われちゃったんだ？」

 「お前みたいになんの取り柄もないやつは勉強して大学くらい出たほうがいいって」

 「そんなこと言われたの…」

 「大学行く意味とか、わかんねぇし」

 「なんかやりたいこととかあったりするの？」


 そう聞けば私から視線を逸らしてキュッと口を結んでしまった。

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