恋に臆病な僕たちは

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「はぁーい終わりましたよ」

「…ありがと」


コンセントを抜こうとAの後ろから動けば俺に顔を見られないように再びバスタオルを被ろうとする。

だからバスタオルを奪ってやった。


「…！」

「…かぁいいじゃん」


びっくりした反射でしっかり俺の方を向いた、少し幼くなったA。

ブワッと顔を赤くしてソファーの上に三角座りすると膝に顔を埋めた。


「…そういうこと、言わないで」


小さくくぐもった声でもしっかりと聞こえる。


「照れてんの？」

「…他の子にもそうやって言って、喜ばせてるんでしょ」

「…！」

「私、その子たちみたいに喜ばないから、可愛くなんか、ない」


頭を撫でようとして、その手を自分の膝の上に下ろした。

阿部ちゃんが言ってた通り、俺の恋愛事情を知ってるAからすればいろんな子を取っかえ引っかえするチャラいやつだと思われても仕方ない。

払拭しなきゃいけない、自分の手で。

そうするにはやっぱり…玉砕覚悟で伝えるしかないんだよなこの気持ちを。


「A、聞いてほしいことがある」


夜中の1時、テーブルの上にあるふたつ並んだコップには溶けきった氷だけが残っていた。


「…なに？」

「聞いてくれる？」

「うん」


少しだけ顔をあげてこっちを見る切なそうな表情にどうしても抑えきれなかった。


「一旦、ぎゅってしていい？」

「…！どう、して」

「そうしたいから」

「…」


何も言わないAにゆっくり近づいて抱き締めれば抱き締め返してくれるわけでも、拒否されるわけでもない。

目を合わせたままこの思いの丈を全て伝えられるか自信がなくて俺はそのままの体勢で話し始めることにした。

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