その距離わずか、3cm【2】

Scene26 ページ25

＿


「もう俺タバコ吸ってないのに毎回連れ出すのなんなんだよ1人で吸えよ」

「んーなこと言うなよ俺とナベの仲でしょ？」

「どんな仲だよ」

「まあまあ」


11月にもなれば夜は冷える。

コートのポッケに手を突っ込んで身震いした。


「…まだ告白しねーの？」

「いきなりだな」

「俺あんなに忠告してんのに。今だってAちゃんと舘さん2人で片付けしてるよ？」

「お前がここに連れ出したんだろうが」


この間に2人がくっついてたらふっかのせいにして一生恨んでやる。


「…言うよちゃんと」

「ん、上手くいくといーね」

「慰める準備しとけよ」

「しねーよそんなの」

「俺とお前の仲じゃなかったのかよ」

「俺とお前の仲だからしねーの」

「は、？」


意味わからん。

けど、まあいっか。

ふっかがタバコを消して最後の煙を吐き出した。


「あー、外さみぃー」

「お前が自分からタバコ吸いに行ったんだろ」

「まあね」


連れ出されたこっちの身にもなれ。

外さみぃーは俺のセリフだろ。

店に戻ってキッチンに並んでるAと涼太の姿を視界の端に捕らえながらも佐久間と阿部ちゃんのところへ行く。


「しょーたぁおかえりぃー」


佐久間が俺に愛想よく手を振ってきたから何となく振り返す。


「いや俺わい」

「…」

「さっくーん？」


佐久間はムッとしてさっきまで店に飾られていた長いモールをふっかの顔にぐるぐると巻いていく。

されるがままのふっかとそれを見て笑う阿部ちゃん。


「え、なんで佐久間怒ってんの？」

「知らない！怒ってない！ふっかのばーか！」


チラッとキッチンに目をやると涼太がAの頭を撫でている。

ズキッと心が傷んだと同時にモヤモヤ。

あいつ、分かっててあんなことしてんだ。

涼太と目が合って、キッチンから出るとどんどん俺の方に向かってくる。


「…なんだよ」

「あれ？翔太、ご機嫌ななめ？」

「誰のせいだよ」

「ねえ翔太」

「…あ？」

「今日このサプライズを考えたのはAなんだし、お礼言ってきなよ」


そう言ってふっかのところへ行くと、顔に巻かれたモールを解いてまた巻き直してと遊び始めた。


「…言われなくても言いに行くっつーの」

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